[海野素央のアイ・ラブ・USA]


海野素央 (明治大学教授、心理学博士)


 今回のテーマは、「トランプ候補の不公平」です。ルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長の支持表明を得た不動産王ドナルド・トランプ候補は、4月19日(以下、現地時間)に地元ニューヨーク州で行われる共和党予備選挙でテッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)に圧勝して、クルーズ陣営の勢いを削ぎたいところです。

公平を求めるトランプ候補(iStock)
公平を求めるトランプ候補(iStock)
 同月26日にも、ペンシルべニア州及びコネチカット州など北東部5州で共和党予備選挙が開催されます。トランプ候補が急きょカリフォルニア州での記者会見をキャンセルした背景には、南部テキサス州を地盤とする同上院議員が苦戦すると予想される北東部で、一気に突き放そうという意図が見えてきます。

 本稿では、ニューヨーク決戦を前に共和党予備選挙・党員集会におけるトランプ候補の言動に基づいて、どのような考え方やものの見方をする傾向があるのか、同候補の思考様式について述べていきます。


トランプの不公平


 トランプ候補の思考様式で看過できないのが「不公平」です(図表)。


 トランプ候補は、『トランプ自伝』(ドナルド・トランプ&トニー・シュワォーツ, 相原真理子訳, ちくま文庫)の中で「良くしてくれた人には、こちらも良くする。けれども不公平な扱いや不法な処遇を受けたり、不当に利用されそうになった時には徹底的に戦うのが私の信条だ」と述べており、不公平に対してかなり敏感に反応する傾向があることが窺えます。その傾向は、ビジネスのみならず2016年米大統領選挙においても顕著に現れています。

 たとえば、昨年8月6日に開催された第1回共和党テレビ討論会で、フォックス・ニュースの女性キャスターで同討論会の司会を務めたメーガン・ケリー氏が同候補を公平に扱っていなかったと抗議をしています。トランプ候補は自分に対する質問が、他候補のそれと比較して厳しく不公平であったと議論したのです。それ以後、同候補はテレビ討論会が開催される度に、討論会の内容を公平・不公平で評価するようになりました。

 これに加えて、指名獲得のルールに関してもトランプ候補は、独自の「不公平理論」を唱えています。クルーズ上院議員との代議員獲得争いが激化し、夏の共和党全国大会での決戦投票の可能性が報道されるようになると、トランプ候補は自分が最も予備選挙・党員集会で得票数が多い点を強調し始めたのです。その背景には、決戦投票に持ち込まれると、同候補よりも得票数が少なかった候補が指名獲得をする可能性が出てくるからです。同候補は、そのような事態を予想し、得票数が最も多い候補が指名を獲得できないのは不公平だと議論するのです。