日高義樹(米ハドソン研究所首席研究員)

《徳間書店『トランプが日米関係を壊す』より》
 アメリカ政治の中心になってきた共和党主流の保守勢力と、突如、大統領選挙戦に侵略してきた、いわば異星人の不動産王ドナルド・トランプが一大衝突を起こしたため、世界を主導する国が建国以来の大混乱に陥っている。

 歴史的ともいえるこの政治的混乱によって、これまで国際社会の安定の基盤になってきたアメリカという、世界を支える大きなプレートが壊れ始めたことから、二〇一六年の今年は地球規模の震動が続くと思われる。とくに国の安全保障のすべてをアメリカに頼ってきた日本は、大きく揺れ動く世界情勢のなかで重大な影響を受けることになる。日本の安定と繁栄を保障してきた日米関係に危機が迫っている。

米アラバマ州の集会で演説するトランプ氏=2015年8月21 日
米アラバマ州の集会で演説するトランプ氏=2015年8月21 日  
 アメリカのマスコミは、大統領選挙戦をめぐるドナルド・トランプと共和党保守勢力の衝突を、共和党の内戦としてなかば揶揄しながら報道している。だが、南北戦争を戦い、アメリカの北部工業州を中心に近代的なアメリカを作ったエイブラハム・リンカーン大統領以来、アメリカ政治の中核は常に共和党であった。

 アメリカ政治を支えてきたのは、共和党の持つ保守的な考え方である。その共和党が、ドナルド・トランプという、これまでアメリカ政治には存在しなかった部外者の挑戦によって劇的な変動を起こしている。

 いまの段階でドナルド・トランプの今後の動きを予想することは難しい。だが、アメリカの政治全体が、ドナルド・トランプの台頭によって大きく揺れ動くことになることは間違いない。

 いまここで我々が知る必要があるのは、ドナルド・トランプが実際に大統領になるのかという予測もさることながら、なぜトランプの出現によって、アメリカに政治的な大旋風ともいうべき現象が起きたのか、そしてその結果、アメリカの政治がどう変わるのかということである。

 なぜならば、トランプが大統領になるかどうかに関わりなく、トランプ旋風を巻き起こしたアメリカの人々の考え方が、いまや世界に大混乱を巻き起こそうとしているからである。

 トランプ旋風に象徴される二〇一六年のアメリカの政治現象とは一体、何であるかを理解するとともに、今後どのような混乱が起きてくるのか、我々日本人にどのような危険をもたらすのかを予知し、備えておかねばならない。そのために、この本が皆様のお役に立つのであれば幸甚である。