[WEDGE REPORT]


土方細秩子 (ジャーナリスト)


 「外人恐怖症のファシスト」とドナルド・トランプ氏(69)を名付けたのは、ハリウッド俳優ジョージ・クルーニー。米国内ではトランプ氏をヒトラーに例える批判が噴出しており、共和党首脳部も「ストップ・ザ・トランプ」と銘打った作戦を展開中だ。
トランプ候補の熱狂的支持者たち(iStock)
トランプ候補の熱狂的支持者たち(iStock)
 しかし、トランプ氏の勢いを止めることはもはや不可能だ。3月15日、米大統領予備選は「第二のスーパーチューズデー」を迎えた。そこでなんと、対立候補のマルコ・ルビオ氏の地元、フロリダ州でトランプ氏がルビオ氏を破った。ここでルビオ氏は戦線離脱。ついに一時期14人もいた共和党候補は、トランプ、テッド・クルーズ、オハイオ州知事ジョン・ケーシックの3人に絞り込まれた。ケーシック氏はかろうじて地元オハイオで勝利、しかしこれまでトランプ氏を2位の立場で追ってきたクルーズ氏は全敗の結果だった。

 ルビオ氏は選挙前の演説で「フロリダを制する者が共和党の指名を勝ち取る」と、地元での勝利を確信していた。しかし思わぬ敗退に、トランプ氏のツイッター「サンキュー、マルコ。その通りだ」が追い打ちをかけた。

ラテン系移民からも支持


 フロリダでの勝利は、トランプ氏にとって大きな意味を持つ。メキシコ移民に対する差別的発言などで、ラテン系から嫌われている、と思われていたトランプ氏。ところがラテン系移民の割合が多いフロリダでも支持を得た、つまりトランプ氏には周囲が考えていたよりも弱点が少ない。

 さらに重要なのは、トランプ氏がイリノイ州でも勝利を収めたことだ。3月11日、トランプ氏はシカゴのイリノイ州立大学で集会を開こうとしていた。そこへトランプ氏に抗議するデモ隊が押しかけ、支持者との間で暴力騒ぎとなり、集会は「危険すぎる」とキャンセルされた。

 この事件についてトランプ氏は「私の言論の自由が奪われた」などと発言。各界から「デモ隊にはトランプ氏に抗議する言論の自由はないのか」などの反発が起きている。さらにデモ隊を殴った支持者に対し「訴訟費用などは私が持とうと思う」とまで発言。暴力を煽っているのはトランプ氏自身、との批判がある。

 そのイリノイですら勝利を収めたトランプ氏。普通の候補者ならば、自らの集会で暴力事件が起きれば「遺憾に思う」ものだし、暴力をふるった支持者に対し「理性的な対応を」と呼びかけるはずだ。ところがトランプ氏は「古き良き時代ならば、この程度では済まなかった。集会の邪魔をした人間は今回のことで次はもっとひどい目にあわされると学んだだろう」と言い抜ける。トランプ氏の厚顔無恥さを「テフロン・ドン」と揶揄する声があるが、まさにどんな批判も跳ね返すテフロン加工っぷりだ。