山路徹(ジャーナリスト)



なぜ世間に謝るのか



 「みんな『謝れ』って言うけど、世間の誰に謝ればいいの?」

 これは、タレント・ベッキーさんとの不倫疑惑騒動に関連して、ロックバンド・ゲスの極み乙女。の川谷絵音氏が発した言葉だ。私は思わず苦笑してしまった。確かに不倫騒動は極めてプライベートな問題であって、世間にはまったく関係ない話。謝らなければならない相手は世間ではなく、裏切ってしまった配偶者や実際に迷惑や心配をかけてしまった“関係者”ということになる。したがって、川谷氏が口にした「世間の誰に謝ればいいの?」という言葉は至極正論といえる。

ジャーナリストの山路徹氏(撮影・今井正人)
ジャーナリストの山路徹氏(撮影・今井正人)
 しかし、こうした発言が受け入れられるのは、不倫騒動を起こした男女が共に一般人の場合や、大統領や皇太子が不倫をしてもあまり気にしない欧米の国々に限られる。川谷氏の発言は瞬く間にマスコミに取り上げられ、案の定、世間からは「ついに開き直ったか!」など猛バッシングを受けることとなってしまった。決して川谷氏の肩を持つわけではないが、彼の発言は恐らく“素朴な疑問”として自然に口から飛び出たものだったのではないかと思う。なぜなら、私も“不倫騒動体験者”として、同じような疑問を抱いた事があったからだ。

「なぜ世間に謝るのか?」

 2010年、私自身も“不倫騒動”で世間から猛バッシングを受けた経験がある。覚えている人も少なくないと思うので騒動の説明は省くが、ざっくり言うと、”才女系タレントふたりを手玉に取った悪い男“といったニュアンスで連日芸能マスコミの槍玉に挙げられてしまったのだ。当時、私は記者会見で不倫の事実を認め、素直に「謝罪」したものの、内心は複雑だった。なぜプライベートな問題で世間に謝る必要があるのか?という根本的な疑問が拭えなかったからだ。

 前述したように、不倫騒動自体、当事者とその近親者の問題であって世間にはまったく関係ない。当事者にしか分からない”内情“というものもあるわけで、世間はそうしたことも知らずに、表面的な印象や現象だけで断罪してくる。更に言えば、当時一般人だった私は、個人的な問題で記者会見することにも強い違和感を覚えていた。