岡田千尋(NPO法人アニマルライツセンター代表理事)

 象は、1日のほとんどの時間(16時間~20時間)を探索や採食をして過ごす動物で、特に夕方や明け方に活発に活動します。残りの時間は、仲間とコミュニケーションや、水浴び、睡眠に使います。つまり、ほとんどの時間、活動し続ける動物です。そして自分で食べ物を探して採って食べたい、水浴びをしたい、砂浴びをしたい、仲間とコミュニケーションを取りたいという思いは、象の本能です。

 はな子を含め、日本の動物園に閉じ込められているほとんどの象には、これらの本能を叶える方法がありません。

 やる事がないという退屈は、象を精神的に追い詰めます。攻撃的になったり、うつ状態になったり、異常行動を起こしたりします。何もすることがないというのは虐待の一種なのです。

 さらに、人々の好奇の目に晒され、人が周囲で騒ぎたて、子供が泣きわめくという環境にいつづけなくてはならないことはストレスです。今、はな子は屋内であってもそのような環境に置かれ、人との距離も近く、逃げ場がありません。
はな子は、そんな環境で60年以上を過ごしてきた象です。あなたがはな子の立場だったら、耐えられるでしょうか。

 人間のいっときの娯楽を与えるという役割を押し付けられたはな子は、かつては吉祥寺や井の頭公園周辺への人出、そして経済効果に寄与してきたことでしょう。はな子の恩恵に預かったであろう吉祥寺周辺や東京都の人々は、彼女が少しでもましな環境で最後の時を迎えられるよう、考え、実行する義務を負っているはずです。

 彼女のために、何が出来るのでしょうか。

 まずは、動物行動学に基づいた対応策をサンクチュアリーを持つ海外の専門家の意見を聞きながら考え、具体的に彼女の環境を改善することです。見せ物にすることを前提とした人が喜ぶ対策が優先されるべきではありません。また、「愛情深く見守る」ことでは、彼女は何一つ救われません。応援する声をかけることも、なんの救いにもなりません。

 出来る事はたくさんあります。
 
 サンクチュアリに移送できるのならそれが最適でしょう。海外の専門家に見てもらい、健康上難しいと判断されるのであれば、環境と行動エンリッチメントをトライし続けるべきです。