プレミアリーグで、日本代表の岡崎慎司が所属するレスター・シティがチーム創設132年目にして初のリーグ制覇を成し遂げた。開幕前にはほとんど誰もレスター・シティの優勝を予想していなかった。これほど痛快な出来事も珍しい。あらゆることを賭けの対象にする英国内のブックメーカーは、レスター・シティ優勝に5000倍のオッズをつけていた。5000倍といえば、「ネス湖のネッシーが存在感した」「エルビス・プレスリーは生きていた」といった賭けと同じと報じられ、これも驚嘆に拍車をかけた。それほど「ありえない」と思われた優勝。その輪の中に岡崎慎司がいたことは、日本人にとっても、うれしく誇らしい出来事だった。
 レスターの初優勝が決まり、チームメートと共に喜びを爆発させる岡崎(中央)
=5月2日、レスター(ゲッティ=共同)
 レスターの初優勝が決まり、チームメートと共に喜びを爆発させる岡崎(中央) =5月2日、レスター(ゲッティ=共同)
 奇跡的とも形容される優勝が現実になったのは、現有戦力で最高の成果をあげる策として採用された「カウンターアタック」が物の見事にはまったことが最大の要因。これは優勝を目指した戦略でなく、なんとか降格を免れようと採った策。それが頂点までチームを導いた。カウンターアタックで勝利を握る前提には堅い守りが不可欠だ。今季のレスター・シティは、相手に決定的なチャンスを与えても最後まであきらめず、相手シュートをブロックに行き、「ブロック王」と呼ばれたディフェンダーのモーガン(ジャマイカ)の存在があった。彼とコンビを組むフート(ドイツ)ら、ディフェンス陣の渋とさは際立っていた。

 ゴール前でボールを奪い、ロングボールで前線に送ると、驚異的な突破力を見せたバーディを中心とした攻撃陣が相手ゴールに襲いかかった。シーズン途中まで得点王争いを独走したバーディはまさに救世主。そして、マフレズ、岡崎が絡んで勝利のゴールを重ねた。何しろ、常識的には勝利への鍵とされるボール支配率もパス成功数もリーグでワースト3に入っている。この数字は普通は優勝チームのものではない。それほど今季のレスター・シティは常識を捨て、全員が徹底してカウンターアタックにかけて奇跡を起こしたのだ。岡崎が決めた芸術的なオーバーヘッド・シュートは、優勝のシーズンを語るファンにとっては忘れられないファイン・ゴールに違いない。
マンチェスターU戦の前半、ルーニー(左)と競り合うレスターの岡崎
=5月1日、マンチェスター(共同)
マンチェスターU戦の前半、ルーニー(左)と競り合うレスターの岡崎 =5月1日、マンチェスター(共同) 
 岡崎慎司は、歴代の日本代表フォワードの中でも「決定力を持つストライカー」と言えるだろう。が、歴代最高だと誰もが認めるかどうか、意見は分かれるに違いない。しかし、そんな評価とは別次元で「レスター・シティを132年目に優勝に導いた伝説のイレブンのひとりだ」という事実は動かない。シンジ・オカザキの名はレスター・シティで永く語り継がれ、ずっと愛され、慕われ続けるだろう。スポーツ選手にとって、これほどの栄誉があるだろうか。経済的な収入を追い求めたらきりがないが、どんな高額報酬も今回の岡崎が得た栄光には叶わないのではないか。