須見健矢(弁護士)

 「わいせつ」とは、最高裁判所の判例により、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」とされてきました。

第一審判決後におこなわれたろくでなし子弁護団の説明会(撮影:松田穣)
第一審判決後におこなわれたろくでなし子弁護団の説明会(撮影:松田穣)
 ろくでなし子さんの作る「デコまん」と言われる作品は、女性器を型取りしたものをベースに作成されていますが、事前に情報を与えられなければ、他人にはそのことが全く分からない程の装飾が施されています。
 
 また、彼女は、「デコまん」以外にも人形や建物などのミニチュアを乗せた「ジオラまん」という作品も数多く作っており、これも女性器を型取りした物がベースになっていますが、ユーモアあふれる創作で、笑いを誘うものでしかありません。

 「デコまん」も「ジオラまん」も、その一つ一つに彼女の創作意図が込められていますが、どの作品にも共通するのは、決して、これらの作品を見た人、手に取った人の性欲を刺激させるものではないこということです。全て,彼女が自らの女性器を男性から取り戻すという意図で作られたものです。彼女は、人の性欲を刺激するどころか、それとは正反対に女性器が「いやらしいもの」ではないということを、創作を通じて表現しているのです。

 しかし、2014年12月、彼女は、デコまん3点を女性向けアダルトショップ店内に展示したとの罪で、起訴されました。

 これより前の同年7月、彼女は、自らの女性器を3Dスキャンしたデータを頒布したとして、警察により逮捕されました。これとて、下半身から切り取られた性器部分だけのデータであり、再現したものを見ても、地形図のような無機質な印象しか受けず、性欲を刺激するものとは思えません。

 また、その頒布の過程そのものがプロジェクトアートと美術専門家から評されています。つまり、女性器を基に人が乗れる乗り物を作りたいと考えて、実際に女性器をスキャンしたデータからボートを制作するというプロジェクトを立ち上げ、進水式まで行っていますが、その資金をクラウンドファンドに寄付してくれた人へのお礼として、そのデータのダウンロードができるURLをメールで送信したにすぎません。寄付してくれた人は皆彼女のプロジェクトを支持する人ばかりです。