荻原博子(経済ジャーナリスト)

 税金を払わなくてもよくするために、タックスヘイブン(租税回避地)に世界の24万の企業が法人を設立してきたことを示す「パナマ文書」が、経済界に激震を与えています。


タックスヘイブン(租税回避地)に関するパナマ文書
タックスヘイブン(租税回避地)に関するパナマ文書 
 これは、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した、利用者の企業や個人の情報が書かれた密文書。「パナマ文書」と呼ばれ、ここにはロシアのプーチン大統領の友人やイギリス、パキスタンの首相、中国の習近平の親戚やアイスランドの首相本人の名前も挙がっていたことで、世界中に衝撃が走りました。

 日本でも、財界の要人をはじめとして約400の個人や企業が、このリストに載っているといわれ、ケイマン諸島と並ぶタックスヘイブンのメッカであるカリブの英領バージン諸島には関連会社を持つ日本企業などにも疑いの目が向けられています。

 実態については、今後の解明が急がれるところですが、ただ、世界の金融資産半分以上がこうしたタックスヘイブンの国に流れていると言われていて、これは見逃せない大問題です。

 タックスヘイブンといえば、代表的なのがジャマイカから北西約30㎞に位置するケイマン諸島。人口6万人に満たない日本の佐渡島の3分の1程度の面積のこの島々に、なんと6万社以上の法人があります。これだけでも、いかに幽霊法人が多いかがわかりますが、この小さな島に、日本からだけで55兆円とも63兆円とも言われるお金が流れているといわれています。

 世界ぐるみの税金逃れの地で、あまりにもスケールが大きすぎてなんだか庶民には関係ない雲の上の話のような気がしますが、実は、そうではありません。実は、このタックスヘイブンが、私たちの暮らしにも脅威をもたらすのです。

富の再配分を根底から崩すタックスヘイブン


 日本国憲法の30条では、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」という納税の義務が定められています。なぜ、憲法で納税の義務を定めているのかと言えば、国に当然納めるべき税を納めない人がいると、税金を払う人と払わない人の間に不公平が生まれ、税の公平性が保てなくなるからです。

 同じ領土内に住んでいる人の中には、富める人も入れば貧しい人もいます。富める人はその分を負担をして、貧しい人を助ける富の再配分をしているのが国です。ですから、日本の税の三原則は、公平・中立・簡素。公平とは、みんなが同額の税金を払うことではなく、応能の原則といって貧しい人がほとんど税金を払えなくても、経済力のある人がその能力に応じてより多くの税金を支払うことをいいます。こうした集められた税金は、公共サービスに使われ、多くの人の暮らしを支えます。