遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士)

 パナマ文書が中国政治の中枢、中南海に衝撃を与えている。なぜならその中に習近平の親戚を始め、党内序列ナンバー5の劉雲山やナンバー7の張高麗など、チャイナ・セブン(習近平政権における中共中央政治局常務委員会委員7名)が3名も含まれているからだ(説明が必要なとき以外は敬称略)。また、かつての指導層の血縁者の名前もある。件数は中国が世界一だという。

 4月の初期では、中国以外の国でリストアップされた指導者の名前の一部を公開したりなどしたが、それも削除され、五月に入ると中国大陸のネット空間で「パナマ文書(巴拿馬文書)」と入力すると、なんと、ヒット数は「ゼロ!」という徹底ぶりになってしまった。完璧封鎖なのである。
 それはそうだろう。5月10日にはパナマ文書名簿の第二弾が発表されるとあって、中国政府は必死だ。万一にもチャイナ・セブンで腐敗取締りに辣腕を振るっている党内序列ナンバー6の王岐山(中共中央紀律検査委員会書記)の名前でもあったらお終いだからだ。

 そのようなことにでもなったら、習近平政権の看板である反腐敗運動も挫折しかねない。ひょっとすれば、一党支配体制を揺るがす事態に発展する可能性だってある。

 だから、これは西側諸国の陰謀だと言いながらも、完全封鎖なのだ。

第一弾公表で名前が挙がった中国の新旧指導者たち


 それでは、いったいどういう人たちの名前が挙がっているのかをみてみよう。

1.習近平(国家主席、チャイナ・セブン党内序列ナンバー1):習近平の姉の夫、鄧家貴が、オフショア会社2社の董事長で株主。

2.劉雲山(チャイナ・セブン党内序列ナンバー5、イデオロギー担当):息子・劉楽飛の妻・賈麗青(エール大学MBA)が、オフショア会社1社の董事長で株主。

3.張高麗(チャイナ・セブン党内序列ナンバー7、国務院第一副総理):娘婿の李聖溌がオフショア会社3社の董事長および株主。

4.李鵬(元国務院総理、1987年~1998年):娘の李小琳がオフショア会社1社の董事長および株主。

5.曽慶紅(元国家副主席、2002年~2007年):実の弟・曽慶淮がオフショア会社1社の董事長。

6.賈慶林(元チャイナ・ナイン、党内序列ナンバー4、2002年~2012年):孫娘の李紫丹がオフショア会社1社を所有。(チャイナ・ナインは胡錦濤政権における中共中央政治局常務委員会委員9名を指す。)

7.薄熙来(元中共中央政治局委員、2007年~2012年):妻の谷開来がフランスの弁護士(Patrick Henri Devillers)とともにオフショア会社を利用してフランスに別荘を買い、2000年からは代理人を通してオフショア会社を開設していた。

8.胡耀邦(元中共中央総書記、1982年~1987年):三男の胡徳華がオフショア会社1社の董事長で株主。

9.毛沢東(建国の父!):孫の娘婿・陳東升がオフショア会社1社の董事長で株主。

 以上だ。本稿では、現役のチャイナ・セブンに関してのみ分析する。