仲野博文(ジャーナリスト)

 今から1年以上前、ドイツのミュンヘンにある南ドイツ新聞に匿名の内部告発者が接触。この人物はパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部資料を暗号化したデータファイルで南ドイツ新聞に送り、「この法律事務所が行ってきた犯罪行為を世に知らしめてほしい」と、ファイルの公表を要求。そこから数か月の間に、追加資料がデータファイルで送られ、南ドイツ新聞が受け取ったファイルの合計は2.6テラバイトに達した。このファイルはのちにパナマ文書という名で世界を震撼させることになるが、「アメリカが主導した」という陰謀論も囁かれている。全体像がまだ見えない中で、パナマ文書公開の意図を考えてみる。

パナマ市の法律事務所「モサック・フォンセカ」の建物の外で警備する警官=4月12日
パナマ市の法律事務所「モサック・フォンセカ」の建物の外で警備する警官=4月12日
  日本時間の10日午前3時に一部情報が公開されたパナマ文書。6日にはのちにパナマ文書と呼ばれる2.6テラバイトのデータを南ドイツ新聞に送った匿名の情報提供者が、「革命はデジタル化される」と題した声明を発表し、南ドイツ新聞や国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)がウェブに声明を掲載した。情報提供者は「John Doe」という身元不明男性に使われる俗称を使い、収入格差を是正したいという思いが情報提供のきっかけになったことを明かしている。これまでの情報提供者が、結果的には逮捕・拘留されてきた事例を挙げ、免責を確約してくれた場合には各国政府に協力する姿勢も打ち出している。

  この匿名の情報提供者は声明の中で、これまでに政府や諜報機関に一度も勤務したことはないと断言。特定の国の利益のために情報をリークしたのではないと主張している。また、映画「戦場のメリークリスマス」のロケ地としても知られ、近年はタックスヘイブンとしても知られるクック諸島(もともとはニュージーランドの属領)に対して何の対応もしてこなかったニュージーランドのジョン・キー首相が名指しで批判されている。キー首相と共に名指しで批判されたもう一人の人物は、先月26日に米財務省傘下の金融犯罪取締ネットワークの局長を辞任すると発表したジェニファー・カルベリー氏で、彼女はパナマ文書でも名前が頻繁に出てくるHSBC(香港上海銀行)に重役待遇で迎えられると一部で報じられている。金融犯罪の取り締まりを指揮していた人物が、パナマ文書でその存在が大きく取りざたされた金融機関に転職することへの問題提起も声明では見られた。なぜこの二人が名指しで批判されたのかは不明だ。

 パナマ文書の内容の一部は4月3日に公表され、世界各国の現職のリーダーがオフショア取引を行っていた実態が明らかになり、アイスランドではグンロイグソン首相が辞任する騒動にまで発展した。また、ロシアのプーチン大統領が総額2000億円以上の隠し資産を保有し、10代の頃からの友人でチェロ奏者のセルゲイ・ラドゥーギン氏が所有する複数のオフショア法人を中心に送金が行われたとする記録も発表されている。