早川正士(電気通信大学名誉教授)


 今回の熊本直下型地震による甚大な被害を見るにつけ、近い将来発生するといわれる南海トラフ地震や関東直下型地震の不安が募る。地震予知への国民からの期待が高まる一方で、依然として地震予知不可能論が根強いのも現実だ。そこで、本稿では、「地震は予知できる」という立場に立って、短期予知、地震予知学、地震予知の可能性を紹介し、最後に地震予測情報を活用した危機管理などの将来の方向性を提案する。

地震の短期予知とは

 地震予知は、その時間スケールにより長期(100年以上)、中期(数10年)及び短期(数週間~1カ月)に分類される。私たち地震予知学に携わる研究者は「短期予知」を対象としている。すなわち、地震の前に「いつ、どこで、どれくらいの規模(マグニチュード)」の地震が起こるのかを決めることである。しかも、これら三要素をそれなりの精度で決めなければならず、もともとすこぶる難しい仕事である。この短期予知は、日本のような地震国では社会的要請の強い課題であろうが、地震災害を軽減するという目的のためには予知研究よりは防災の方がより直接的であり、建造物の耐震性等を高めることが必要であることは論を持たない。予知は、国民的関心も高く、また学問的に見ても地球科学に残された最大のフロンティアの一つと言ってもよい。

 読者は永らく「地震予知はできない」と聞かされている。いわゆる「地震予知不可能論」だ。2011年東北大震災後、2013年にも国は改めて「地震は予知できない」と社会に宣言し、新聞誌上で大きく取り上げられたことを皆様は記憶されていよう。これは地震学の手法では短期予知は困難であるという結論であると理解すべきだ。

 因みに、長、中期予測(予知は適切でなく、予測という)はこれまで日本でやられてきた地震学のテーマで、過去の事例に基づく確率予測で、「南関東ではここ30年でマグニチュード7の地震が起こる確率が70%」という予報をよく耳にされていると思う。都市計画や地震保険料の設定などにおいてそれなりの意味はあろう。しかし、あくまで確率であり、それ以上でもそれ以下でもなく、来週地震が来るのか否かはわからないと言える。例えば、今回の熊本直下型地震も国の地震調査推進本部が発表しているその地域での中期予測では1%にも満たなかったが、実際には地震は起こってしまったのだ。以上の事を踏まえて、国民誰もが「日本中どこでも地震は起こる」と念頭におくことが重要であり、この考えが災害軽減のための防災には有用だと言える。