著者 中村竜也

 安倍政権の中で許せない愚策は山ほどあるが、その中でも民主主義の根幹を壊しているものが、経済財政諮問会議をはじめとする政府の重要政策に関する会議の民間議員を名乗る一般人の存在である。

 そもそもあなたはこの民間議員という存在を認識していただろうか。通常、我々は選挙で政治家を選ぶ。ところがこの民間議員とやらは、選挙で国民に選ばれたわけでも国のために活動してる訳でもない強欲者の集まりなのだ。
経済財政諮問会議であいさつする安倍晋三首相=2015年12月24日、首相官邸
経済財政諮問会議であいさつする安倍晋三首相=2015年12月24日、首相官邸
 この手の人間たちが好むのが「財政健全化」「規制緩和による自由競争」「グローバル化」「平等な競争」などという「良いことに聞こえる響き」の言葉である。

 ご存知の通り、日本政府は2020年までにプライマリーバランスの黒字化を掲げている。これは各国共通なのだが「なぜか」日本だけは公共投資による歳出も加味されて考えられている。普通に考えれば、公共投資を行えばその分インフラという資産価値が代わりに生まれる。そもそもプライマリーバランスとは「公債金以外の租税収入・歳出」を表す。これは私見でもなんでもなく、辞書にも載っている一般的な定義である。

 では、なぜ日本では健全財政化の目安とする(と政府が勝手にしている)プライマリーバランスに公債を入れるのか。理由は簡単だ。その背後で必ず得をする誰かがいるからだ。

 例えば、財政健全化の名の下に政府が歳出を渋るとする(実際に渋っているが)。政府が財政投資をしなければ延々と需要が供給より少ない状態、すなわちデフレが続く。そうなれば真っ先に疲弊するのは経済基盤が脆弱な地方だ。すると地方と首都圏の経済格差が広がり人口の流失に歯止めが利かなくなる。そこである一般人たちが「地方交付金は効果もあるかわからないのにばらまかれている、より効果のあるものに限定すべきだ」などと言い始める。結果として地方はさらに脆弱になる。脆弱になり、供給能力を維持できない地方企業は、もはや首都圏の大企業・海外資本に太刀打ちできない。最終的に買収されるか廃業して、元来の市場を大手に奪われる。

 ここでいう一般人とは、もちろん政府に出入りして首相に我が物顔で意見する民間議員たちのことだ。上記の一連の流れはこれまた私の勝手な想像ではなく、今現在既に起こっていることだ。

〈骨太方針、交付金や医療保険給付の大幅見直しを=諮問会議民間議員〉

 政府が11日に開催した経済財政諮問会議で、16年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)の骨子(目次)が示された。その中の財政再建に関する部分では、民間議員が一般歳出で規模の大きい各種交付金の「見える化」を進めて見直しに反映させることを提言。

 また、医療保険給付などには前例を踏まえることなく寿命の伸びなど効果の実証に基づき、踏み込んだ見直しの必要性が提言された。

 骨太方針について、民間議員からはGDP600兆円経済の実現と20年度財政健全化目標の双方の達成を目指すことが提言された。またアベノミクスの成果も活用して一億総活躍社会の実現を図ることも主張。ただ子育て支援など追加的な歳出増加の財源は、「適切な安定財源の確保」との言及にとどまり、具体的な方針は示されなかった。

 また骨子では、一般歳出について経済再生と財政健全化の双方に資するかどうかという観点からの優先順位づけ(ワイズスペンディング)の方針が示された。民間議員からはこうした方針に基づいた議論を通じて、予算編成の過程に組みこんでいくことが提言された。

 中でも規模が大きい国庫支出金は、近年各種交付金が急増しているため、民間議員らは地方の創意工夫によって経済活性化につながる交付の在り方などを検討して、見直しに反映することとした。

 さらに義務的経費についても、医療費給付諸費9.5兆円や介護保険運営推進費2.6兆円などについて、過去のトレンドを前例とせずに、寿命延伸やIT化の進展などを考慮しながら、踏み込んだ見直しをすべきとした。

 彼らの言い分に従えば、「成果主義を導入し配分を変えろ」というのが主張だが、彼らはなぜ地方交付金があるのか、一度でも考えたことがあるのだろうか。それは社会保障や国民保険も同様だ。これらの保障を民間議員の言い分通りに民営化したら、たちまち血に飢えた亡者たちによる争いが起こり、サービスの質の低下につながるだろう。

 例えばある民間議員が医薬品の通信販売を可能にするよう要請した。彼が日本を代表する大手インターネットモールを展開する企業のトップであることが偶然だと思う人はいないだろう。

 話を地方に戻せば、地方を食いものにする彼ら民間議員にとっては、デフレが続いて疲弊すればするほど都合が良いのだ。そうなると、なぜ日本が長年に渡りデフレから脱却できないのか。なぜ貧困層が増えているにも関わらず、億万長者の数は増えているのか。これらの答えはもうお分かりだろう。

 日本はデフレ脱却の名目で地方の財政をさらに貧困化させているが、お隣の自称共産国はどうだろうか。

<中国、北東部の経済再生に向け金融支援拡大へ>

 中国は、北東部の経済再生を促すため、今後5年間に追加金融支援を行う方針。国家発展改革委員会(NDRC)で北東部の再生を担当する周建平司長が10日、明らかにした。

 同司長によると、政府は今後3年間に同地域で130以上のインフラ事業の立ち上げを計画している。

 また、「資源が枯渇した」多くの都市が経営破綻やレイオフに対処し、多額の環境浄化費用を負担するのを支援するため、金融支援を拡大するという。

 具体的な金額には言及せず、最終的な額はニーズに左右されるとした。

 中国北東部は鉱業や重工業の中心地としてかつて栄えたが、近年は資源枯渇と景気低迷にあえいでいる。

 デフレにも関わらず地方の経済力をより奪い続けてる日本と、明確な投資での支援を行う中国。どちらが正しい経済政策か一目瞭然だろう(中国は中国で供給過多に悩まされているが)。中国の場合、いくら嘘で塗り固めようとも国民の貧困はごまかせない。ただでさえとてつもない格差が存在する中国で(この時点で共産国家ではないが)これ以上貧富の差が拡大しようものなら、天安門事件並みの暴動が起きかねないため、政府はやらざるを得ない事情もあるが、少なくともデフレ脱却のためには正しい政策を行っていることになるわけだ。

 こうなると、いったい誰が日本の経済を長いデフレに浸からせたままにしているのか誰の目にも明らかだ。しかも信じられないことに、重要政策に関する会議は一般に公開されず内容も議事録を通してしか伝わらない。これが民主主義なのだろうか。

 昨今、多くの老若男女が安保や原発で国会前でデモをしているが、彼らは考えるべきだろう。いったい誰が今得をしているのかを。