森鷹久(フリー編集者、ライター)


 今年2月、覚せい剤取締法違反で警視庁に逮捕された元プロ野球選手、清原和博被告の初公判が17日、東京地裁で開かれた。清原被告は起訴事実を全面的に認め、息子や関係者に対して謝罪。「再犯の可能性が強い」と指摘する検察側の求刑は懲役2年6月だった。

  「自らの弱さ」や「心の隙間」といった言葉で、覚せい剤に溺れてしまった経緯を涙ながらに語った清原被告。情状証人として出廷した”盟友”の元プロ野球選手、佐々木主浩氏と固い握手をして、法廷を後にしたという。一方で、覚せい剤に手を出した時期について「引退後」と話す清原被告だが、「現役時代から使用していた」と指摘する関係者の証言も、テレビや週刊誌で報じられている。果たしてその真相は?

 球界のスーパースター清原の「シャブで逮捕」は、我々国民にとって、衝撃的なニュースだった。その一方で、意外にもあっけない形での幕引き、というのが捜査関係者、マスコミの見方だ。だが、これで本当に幕引きとなるのかといえば、私にはとてもそう思えない。

清原和博被告の初公判で、傍聴券抽選の整理券を求め並ぶ人たち=2016年5月17日、東京・日比谷公園
清原和博被告の初公判で、傍聴券抽選の整理券を求め並ぶ人たち=2016年5月17日、東京・日比谷公園
 薬物絡みの事件は、一部で「被害者無き犯罪」ともいわれる。ある人物が違法薬物を使用したところで、第三者が傷を負うことはなく、不利益を被ることはないからだ。もちろん、ある人物の家族や親族、仕事のパートナーにとってはそう言えないだろうが、薬物事件が一般的な殺人や窃盗などの「事件」とは性質が大きく異なるものであることも確かだ。

 私はこれまで覚せい剤やいわゆる危険ドラッグなどの、違法薬物にまつわる取材を続けてきたが、薬物事件においての本当の被害者は、違法薬物にのめり込んでしまった当の本人である、と思っている。その上で、被害者ともいえる清原被告の今後について「更生出来るか」、また「社会復帰出来るか」という点については、いずれも悲観的にしか説明ができない。

 その理由は大きく分けて二つある。

 一つは「中年の薬物依存者は脱出困難」という、私の取材や当局データに裏付けられた事実だ。以前取材したドラッグ依存者の更生施設において、施設入所者のほとんどが30代以下の若者だった。入所のきっかけはさまざまだが、ドラッグの使用により逮捕や心身に異常をきたし、かつ「親などの強制力」によってそこにいる、という人がほとんどだった。