八幡和郎(徳島文理大教授、評論家)

 日本の皇位継承が男系男子に限定されていることをやめるように国連女子差別撤廃委員会が勧告しようとしたが、日本政府代表部の抗議で中止されたと報じられた。慰安婦問題では動きが鈍かった外務省も、さすがに今度は素早く動いたようだ。いつも、こうあって欲しい。

 このニュースを聞いて、保守派は激怒し、中韓の意を汲んだ人も含めて反天皇制をもくろむ勢力は、何か利用できないかほくそ笑んでいる。

 しかし、大事なことは冷静な議論である。ポイントは三つだ。

(1)国連委員会がこのような勧告をするのはヨーロッパでの王位継承原則の変更の動向もあるので国際的常識として無茶苦茶なことではない
(2)しかし、日本の天皇制とヨーロッパの君主制の違いを理解すれば同じ扱いをする必要は無い
(3)そもそも、国連の委員会の勧告などたいした権威は無いので一喜一憂すべきでない

という三点を説明したいと思う。
 

男子優先をやめる方向のヨーロッパ王室


 ヨーロッパのロイヤル・ファミリー事情については、『世界の王室うんちく大全』(平凡社新書)という本を書いて、それぞれの王位継承がどのようにされてきたかを紹介したことがある。この方面ではいちばん詳しい本である。

 歴史的には、フランスのブルボン家のように男子男系にこだわってきたところもあるが、これは、英仏百年戦争でイギリス王家に乗っ取られかかった記憶がゆえである。イギリスは、女系も女子もいいが男子優先だった。またデンマークでは、女系はいいが女王はダメということになっていた。

 ところが、多くの国で年長の子供を男女に限らず優先にするようになってきている。イギリスは、エリザベス女王のあとチャールズ、ウィリアムの次はウィリアムの長子ということになっていたが、男子のジョージが生まれたので三代男王が続くことになるが、スウェーデンは女王になった。
 ただし、ヨーロッパの条約などで強制されたのではなく、各国の自主判断の結果である。そういう意味で、国連の委員会が何を言おうが、それに従うかは各国の問題だ。

 それに、おかしいといえばおかしいのは、男子優先がいけないなら長子優先はどうしてよいのか理由がない。国連の委員会はうちの管轄ではないとでも言うのだろうが。また、ヨーロッパの王位継承は、特定の宗教の信者であることが条件になっていることが多い。イギリスでもオランダでもカトリックは排除されているが、これは信教の自由に反しないのだろうか。

 いずれにしろ、国連の女子差別撤廃委員会などというものは、総合的な判断をしている場ではないし、自分の立場からの意見を気ままにいうだけの機関だ。