園田寿(甲南大学法科大学院教授、弁護士)  

 報道によると、大阪府堺市がコンビニで売られている成人向け雑誌(いわゆる有害図書)に対して、95万円の予算を計上して半透明の色つきビニール袋で雑誌を覆う取り組みを始めるというこです。

 コンビニエンスストアに陳列された成人向け雑誌を子供たちが目にする機会を減らすため、堺市は新年度、コンビニに協力を求め、市内店舗で、半透明の色つきビニール袋で雑誌を覆う取り組みを始める。また雑誌棚を子供の目に入りにくい場所に移動してもらうとともに、小さな子供の視線が雑誌に行きにくいよう棚の下側に横長のプラスチック製板を設ける。

 市市民協働課によると、こうした取り組みは全国でも珍しいという。府内では府条例で18歳未満の青少年に対し、指定された「有害図書類」の販売・閲覧を禁止しており、コンビニなどでは区分陳列されている。対象となるのはこうした区分陳列された雑誌類。雑誌を覆うビニール袋の色は未定だが、縦12センチの半透明で、腹巻きのように雑誌の中央部分を覆い、表紙の写真などを見えにくくする。上部の雑誌名の部分と下部は覆わず見えるようにする。十数万枚の購入を予定している。 

産経WEST 2016.2.17より引用

 従来から、大阪府の場合、青少年の自由な出入りを物理的に禁止するスペースに有害図書を陳列する場合や、レジの後ろの棚のように、青少年が有害図書を直接手に取って見ることができないような場所に陳列する場合以外では、ビニールやひも掛けによる個別包装が義務付けられてきました。この場合の「ビニール包装」は、透明なビニールで包装されたもので、表紙はそのまま見えていました。ところが、今回、堺市が実施しようとしている方策は、これを一歩進めて、半透明のビニールで雑誌を覆って表紙の一部を隠す方法なのです。

 有害図書規制は、出版や表現行為、あるいは知る権利に対する制約ですので、厳格な法的根拠が必要なのですが、今回の堺市の取組みが従来からの有害図書規制の法的枠組みを逸脱していないかどうかが問題となります。

大阪府における有害図書規制


 大阪府では、青少年健全育成条例(以下「条例」)第15条と同施行規則(以下「規則」)第6条で区分陳列や個別包装などの措置が規定されています。これは、有害図書類の販売やレンタルなどの営業をする者に対して、18才未満の青少年が有害図書類を買ったり、閲覧したりすることを防止するための措置であって、次のいずれかの方法によって、他の図書類と区別して陳列したり、店員の目が届く場所に陳列することを義務づけるものです。

(陳列方法その1)青少年を自由に出入りさせないための間仕切り等で仕切り、内部を容易に見通すことができない措置がとられた場所に陳列する(下図1)。
(陳列方法その2)ビニール包装、ひも掛け、テープによる2点留めにより、容易に閲覧できない状態にした有害図書類を次のイからニの方法により陳列する(下図2)。
(イ)他の陳列棚と60cm以上話して設置した棚に陳列する。
(ロ)10cm以上張り出す仕切り不透明の板を設け、その間に陳列する。
(ハ)床面から150cm以上の高さの位置に背表紙のみが見えるように陳列する。
(ニ)図書類の販売又は貸付けに従事する者が常駐する場所から5mいないにあり、当該者が直接見て監視できる場所に陳列する。
(陳列方法その3)図書類の販売、貸付け、又は閲覧等に従事する者が常駐するカウンターの上、又は内部に図書類を購入等する者が有害図書類に直接触れることができない状態にして陳列する(下図3)。

 さらに、設置スペースの問題から(陳列方法その2)によるときは、「ビニール包装」または「ひも掛け」を行うことが必要です。そして、決められた区分陳列の方法に従っていない場合、その事業者又は有害図書類を管理する者に対して期限を定めて改善の勧告を行い、従わない場合は、従わなかった者の氏名又は名称・勧告内容等が公表され、それでも改善されない場合は大阪府知事が命令を行います。また、公表後1年以内に再度違反した場合は勧告、公表を経ず、命令が行われます。そして、それでも守らない場合に初めて30万円以下の罰金に処せられます。
大阪府のパンフレット「大人の責任」より
大阪府のパンフレット「大人の責任」より