渋井哲也(フリーライター)

 インターネットを通じた通信制高校「N高等学校」が開校した。出版大手のKADOKAWAとネット配信のドワンゴが経営統合したKADOKAWA・DWANGO(現・カドカワ)が出資する学校法人が運営する。「N」はNet、Next、Necessary、Neutralなどの意味を込めている。教育とエンタメ産業と結びついた点では興味深い。

 教育は二つの面がある。一つは、市民社会で生きる上で必要となる共通教養を身につけることだ。いわば、標準化だ。この面を強調すると、画一的な学習になる。同じ教科書で、同じような方針で学ぶ。卒業をすれば、一般企業などで働く上で求められる教養や作法が身につく。

 反面、個性を伸ばすことも教育の役割だ。人によって興味・関心の方向、能力も異なる。個性化を強調すれば、多様な学習、学びの場が必要になる。教科書は数ある情報の一つだ。N高校の場合、既存の教育にはないものを生み出す可能性を秘める。

 標準化と個性化の両方を実現するためには、学校制度を緩やかにし、教育内容を多様化させる。そして子どもたちの選択範囲を広げることだ。N高校では、全日制と定時制、通信制とある高校の制度を利用する。かつ、個性を伸ばす教育の場として機能することが期待されている。
「カドカワ」が設立した「N高等学校」のネット入学式であいさつする角川歴彦氏(左)=4月6日午後、東京・六本木
「カドカワ」が設立した「N高等学校」のネット入学式であいさつする角川歴彦氏(左)=4月6日午後、東京・六本木
 学びの場の多様化については、最近でも議論になった。不登校など、通常の学校になじめない子どもたちが通っているフリースクールがある。一言でフリースクールといっても様々な方針がある。現行制度の中でも、一定の条件を満たしたフリースクールに通った場合は、出席扱いになる。公的支援はないが、義務教育では卒業扱いになることが多い。

 学校にもフリースクールにも通わず、保護者の判断で家庭で教育をするホームスクールという考え方もある。学校は保護者の教育権を代行しているが、保護者が直接、教育をする。義務教育では、ホームスクールの子どもたちは長期欠席となるが、宿題を提出するなどで卒業として扱われる。