高橋暁子(ITジャーナリスト)

 4月6日にニコファーレで行われたN高等学校の入学式に驚いた人は多かっただろう。入学生たちがVRヘッドセットをつけ、沖縄本校にいる校長と入学式を行う姿は、近未来感にあふれていた。

 N高等学校とは、学校法人角川ドワンゴ学園の運営するインターネットを通じて学べる通信教育制の高等学校だ。5日間の沖縄本校でのスクーリングはあるものの、授業もレポート提出も基本的にはネットを通じて行う仕組みであり、単位を取得することで高校卒業資格が取得できる。
主にインターネットで授業を受ける通信制の「N高等学校」の入学式では、仮想現実(VR)技術を使って沖縄の本校の模様を新入生が体感した=4月6日、東京・六本木(高橋寛次撮影)
主にインターネットで授業を受ける通信制の「N高等学校」の入学式では、仮想現実(VR)技術を使って沖縄の本校の模様を新入生が体感した=4月6日、東京・六本木(高橋寛次撮影)
 「ニコニコ動画」などで知られる角川ドワンゴブランドらしく、遠足は先生と生徒で「ドラクエX」に出かける“ネット遠足”だし、サッカー元日本代表の秋田豊氏を顧問に迎えた「ウイニングイレブン」を使用したサッカーゲーム部などの“ネット部活”を用意するなど、とにかく他の学校と違ってユニークだ。

 N高の動きを期待を込めて見守っている人は多いだろう。そこで、N高に見るインターネットを使った通信教育の可能性と課題について考えてみたい。

リアルで自分を出せない生徒が見つける居場所


 同校の最大の魅力の一つは、「ニコニコ動画」を運営する角川ドワンゴが運営しているという点だ。「何となく面白そうだから」と入学した学生も多いようだが、それで学ぶようになるならまったく問題ないはずだ。同校には、このような「面白そう」があふれており、若者の心をつかんでいる。

 そもそも、何らかの理由で学校を辞めてしまった若者や、引きこもりなど通学が難しい若者に学ぶ機会が開かれ、高卒の資格が取れるというだけで、私は同校の試みを評価したい。講師陣には小説家森村誠一氏や、世界的プログラミング言語「Ruby」の生みの親まつもとゆきひろ氏等を迎えるほか、日本各地で職業体験ができるなど、他ではできない経験ができ、自分のやりたいことを突き詰められる可能性もある。

 一般的に、家庭の所得が高いほど子どもの学力も高くなる傾向があることは知られている。所得が高いほど塾など学校以外の学習の機会が得られるためだ。N高なら奨学金を使えば年間10万円程度で済み、同高内で通常は塾に行かねばならないような大学進学用の学習も可能となっており、その意味でも機会が開かれていると言える。

 今時の子たちは何でもスマホやネットで済ましたい傾向にあるので、ネットだけで授業を受けたり、レポート提出などができる点は好まれる可能性が高い。生徒同士のコミュニケーションツールとして「Slack」が用意されているが、リアルでは自分を出せない生徒が居場所を見つけられる可能性があると考える。