中宮崇(サヨク ウオッチャー)

 

 映画「ズートピア」の人気が止まらない。ツイッター等ネットでの反応を見ても、下手をすると十回も見まくった方もいるようで、二回三回繰り返し見るのが当たり前になっているという大人気ぶりだ。かく言う私も、名古屋から大阪東京に遠征してまで既に7回も見てしまった。

『ズートピア』V3達成 カメのごとくスローペースで60億円も視野に

 人類が存在せず肉食獣と草食獣が仲良く暮らす超近代都市ズートピア。そこから300km以上離れた田舎町に住む主人公の少女うさぎのジュディはそんな理想郷での生活を夢見て努力し、見事うさぎ族初の警察官になる……と言うところから始まる物語だ。一見ありふれたお話に聞こえるので、ズートピアに「所詮子供向けアニメだ」という偏見をお持ちの方々からアナと雪の女王を遥かに上回る面白さの秘密は一体どのあたりにあるのかとよく聞かれる。その最大のポイントを簡単に言うとこうだ。

 「差別や偏見を捨て去ることでどれだけ世界の見方が広がり、人生が豊かになり、日々が楽しくなるかを興奮とともに実体験させてくれる」

 サヨクやリベラルはよく、「差別は正義に反するからやめろ!」「偏見を持つのは良くない」などと偉そうに説教をしつつその実平気で差別するどころかテロ等の暴力さえ振るうが、ディズニーはそんな傲慢でつまらん連中とは大違いだ。なんと「差別や偏見を無くすことはこんなに楽しいことなんだよ、得をすることなんだよ、面白くて気持ちの良いことなんだよ」とたった約二時間の上映時間で体感させてくれるのである。

 しかし、この「差別をなくすことの楽しさ」は、最初に見終わった時すぐにはなかなか気付けない。数日経って「あれ?あそこで描かれていたのはどういうことだったのだろう」と振り返り家族や友人と話し合うことによって、徐々に見えてくることなのである。

  この映画の登場人物(登場動物?)である狐のニックは「詐欺師と呼んでくれ」と言って主人公のうさぎ警官ジュディを怒らせるが、各種インタビュー記事等を見ると、ディズニーもまるでニックのごとく、観客を騙す気まんまんでこの映画を作っていることがわかる。そこに気付かぬ観客は本作を「ディズニーのいつもの子供向けの楽しい冒険活劇」としか感じられず映画館をあとにすることになる。

 それよりも少しマシに深読みできる大人でも、ディズニーの罠に気付かなければ、せいぜいこう感じて感動し号泣するだけであろう。

  「強い肉食獣の支配に対し弱い草食獣のうさぎが挑戦し、見事お互いに和解をする物語」であると。

 めでたし、めでたし。

 それ、見事ディズニーに騙されてますから!

  どういうことか。ズートピアを初めて見る観客のほとんどは、いくつかの偏見や差別心を持ってスクリーンの前に座る。その一つが「肉食獣は強いので、弱い草食獣を虐げている」という偏見だ。ディズニーはこの我々の差別心を極めて巧妙に利用しているのだ。

 映画を見た方は、よーく思い起こしてみて欲しい。ライオンの市長にこき使われていた羊の副市長は、「草食獣は肉食獣の約10倍の人口」と言っているではないか。しかもズートピアは民主政だ。さらに言えば、進化した結果今や肉食獣は草食獣を捕まえて食べているわけではない。暴力とは無縁なのだ。それどころか心優しくさえある。むしろ草食獣の方が凶暴でいじわるだったりする。ということは、ズートピアでモノを言うのは有権者の頭数、票数なのである。

 「肉食獣は強くて草食獣は弱い」という偏見に囚われているとそれに気付かないどころか、「肉食獣=恵まれたアメリカ白人、草食獣=不遇のアメリカ黒人」と思い込んでしまう。ところが実はズートピアにおいては逆に、肉食獣はアメリカにおける黒人同様少数派マイノリティであり、草食獣が圧倒的多数派の強者、つまり白人なのだ!