春日良一(スポーツコンサルタント)

 国際オリンピック委員会(IOC)会長、トマス・バッハは本気でIOCと五輪の改革に乗り出している。1993年9月東京が2020年の五輪開催地に決定した同じIOC総会で第9代IOC会長に就任した。即座に「アジェンダ2020」(五輪改革提言20+20)を提唱し、「クリーン」で「サステナブル」(持続可能)なオリンピックを目指している。

 来年決定する2024年五輪開催都市に向けての行動規範を含む、2016年版「倫理規範」が発表された。その規範はIOC委員の招致都市への訪問を禁止し、贈答品についても一切だめとする厳格さを前のバージョンから受け継いでいるが、「コンサルタント」という項目が新たに登場していることが特筆に値する。立候補都市が契約するコンサルタントについては、個人、法人を問わず、IOCにすべてリストアップして届け出なければならない。
IOCのバッハ会長=2015年5月18日(共同)
IOCのバッハ会長=2015年5月18日(共同)
 そんな中、2020年東京五輪招致委員会がシンガポールに本社を置くブラック・タイディング社に支払った「コンサルタント料」について、不正疑惑が取りざたされている。今回の疑惑について招致委員会理事長の立場にあった日本オリンピック委員会(JOC)竹田恒和会長は、5月18日の衆院文部科学委員会で、この契約について国際陸上競技連盟(IAAF)前会長のラミン・ディアク氏と同社の関係を知った上で、コンサルタント契約を結んだと証言している。竹田氏の説明によれば、「五輪招致に成功するためにはコンサルタントとの契約は必須であり、この契約は妥当」なものであるという。

 五輪招致に関わるコンサルタントについては、それなりの歴史があり、その歴史を知らなければ、今回の疑惑の深層も理解できないだろう。遡ればきりがないが、そもそも五輪開催を獲得するために都市がしのぎを削るようになるのは、五輪開催が利益をもたらすようになってからだ。私が関わった長野冬季五輪の招致活動から水面下にいたコンサルタント的存在が表舞台に出始めてきた。

 後にソルトレークシティー五輪招致疑惑の問題が起こる1999年になって、長野五輪当時からスタジオ6なるエージェントが存在していたことが明らかになるが、このスタジオ6、1988年カルガリー冬季五輪の時には、当時日本選手団渉外として選手村入りしていた私に接触を求めてきたことで記憶にある。その頃は、確かIOC公認の出版メディアとして現れたが、当時は五輪招致に関わるやりとりは表向きのものではなかったのである。