松竹伸幸(ジャーナリスト、編集者)

 安倍首相による解散総選挙が先送りされた。同時選挙に踏み切って両方とも勝利するだけの確信が持てなかったからなのか、参議院選挙単独でやっても圧勝する自信を得たからなのか、どうなのだろう。

成功してきた「争点つぶし」


 安倍首相にとって現在、衆参の両院で3分の2を占め、改憲を発議できるようにすることが、他のあれこれに優先する判断基準となっていることは間違いない。すでに3分の2を占める衆議院を解散するというリスクを冒してまで、同時選挙に踏み切ることを選択肢に加えていたのは、まさにそういう思惑があったからだ。

 その安倍首相にとって、これまでの選挙戦略は、かなりの程度、思惑通りに進んできたと思われる。いわゆる争点つぶしである。

 昨年夏の戦後70周年談話、年末の日韓慰安婦合意では、左派的な人々にさえもある程度のウィングを伸ばすことに成功した。右派の一部は反発したが、これらの人も選挙で投票するとなると自民党しかないことは安倍首相には織り込み済みだろうし、サミットで各国首脳を伊勢神宮に招くことによって、その右派にも飴を与えた格好だ。
伊勢神宮を訪問し、参道を歩く安倍首相(右から3人目)らG7各国首脳=5月26日午前、三重県伊勢市(代表撮影)
伊勢神宮を訪問し、参道を歩く安倍首相(右から3人目)らG7各国首脳=5月26日午前、三重県伊勢市(代表撮影)
 「保育園落ちた、日本死ね!」をめぐって対応を誤り、一時期、追い詰められる事態が生まれたが、ただちに保育士の給与を引き上げるという対策を表明した。これが抜本策ではないという批判はあるが、野党との違いは引き上げの額の違いだけで、方向性は変わらないという印象をつくりあげることに成功している。残業代をゼロにする法案をめぐっては、四野党が共同で労働基準法改正案を提出し、争点化されるのかと思ったが、国会の議論は選挙後の秋に先延ばしされた。

 これらに加え、おまけのようにアメリカからもたらされたのが、オバマ大統領の広島訪問だった。そして極めつけが消費税増税の再延期。これをめぐっても野党の批判はあるが、選挙の争点にはなりづらいだろう。