唐突ですが、「私たち庶民は…」で始まる、あの「庶民のほうが偉いんだ」的なノリが大嫌いで
す。これから政府方針を批判しますが、別に庶民目線ではありません。むしろ首相含めて誰もが
混同しがちな「政策と自己実現」の話でもあります。

 安倍政権の成長戦略のひとつが「女性が輝く日本へ」です。首相官邸のホームページには「待
機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「女性役員・管理職の増加」の3つの政策が掲げら
れていて、要するに「子供を産んだら保育所に預け、職場復帰して企業の幹部になったり起業す
る。」それが女性が輝く社会なんだそうです。

 仕事か家庭かどちらかではなくどっちもできるのが輝く女性とのお達しです。かつてトレンディ
ドラマ(死語)の時代、「恋も仕事も一生懸命なヒロイン」は「第一印象は最悪なのになぜか気
になるアイツ」とあれこれあっても最終回90分スペシャルでキスしてゴールインで済みました。
それだけでもハードル高いと思いましたが、さらに出産したら役員になれとかベンチャーしろと
来ました。最近の輝く女性像は過労死寸前な気がします。

 まず確認しますけど人は何のために働くのでしょう? もちろんお金です。「仕事か家庭か?」
という二者択一はつまり「もっといい生活するか我慢するか」なのです。中には当然、より良い
自我のありかを職業に見いだす人々もいるでしょう。しかし現実に仕事と家庭のひずみで善男善
女を悩ませてきたものは、「輝けない自分」なんてロマンティックなものではなく生活という生々
しい現実です。そして大事なことは、これは別に女性に限った話ではないということです。

 考えてみれば男性こそ昔から「仕事と家庭」の間で相当ミンチになってきたはずです。輝きたい
から仕事を棄てなかったのではなく、収入源としての代打がいないからATM化してでも働き続け
た人もいました。彼等だって二者択一を考えたはずですが、実質上代打のいない状態では「仕事」
をとるしかなかったのです。

 ですから、ドラマでおなじみの仕事か家庭かで悩む女性像というのはちょっとトリッキーで、実
は男性にはすでに答えが否応無しに与えられていたという側面は忘れてはいけないと思います。

 さてここで、安倍内閣の施策の話に戻ります。美辞麗句でお茶濁してますがハッキリ言えば「輝
いてください」イコール「もっと労働者として働いてください。」です。減ってゆく日本の労働人
口を女性で補いますからね。というのが政府の本音です。では女性はどんな仕事でも大歓迎なの
かというとそうでもありません。

 実は、世の中には人が減っても技術や製品価格で補える仕事と、ヒトでしか補えない仕事とい
うものがあります。政府は後者の方を断然お願いしたいわけで、これは保育や介護などがその例です。
まあこれ以上の話は経済評論家みたいな人達がすればいいのでここでやめておきますが、「女性
が輝く社会」てのは実は「高齢化して抜けてゆく労働者層の穴を女性で埋める」って話かと。ま
あ、それでもチャンスはチャンスです。輝くかどうかは結局その人次第ですから。という普通の結
論になってしまいました。だって世の中の仕事ってそういうもんだと思いませんか?