屋山太郎(政治評論家)

 安倍晋三首相が来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを2019年10月まで2年半延期することを表明して通常国会は閉幕した。首相の経済政策アベノミクスへの評価が7月の参院選の争点になるにあたって首相が繰り出したのが消費増税2%の再延期だ。

 自民党内では麻生太郎財務相、谷垣禎一幹事長、稲田朋美政調会長らが再延期に反対し、「どうしても延期するなら総選挙に問うべきだ」と7月の衆参ダブル選挙を主張したが、首相は拒否して参院選だけを選んだ。その理由について菅義偉官房長官は「衆院選をやれば30~40議席減る」との見通しを示していた。首相はいたずらに減らして政権を弱くすべきではないとの判断を優先したのだろう。

 財務省は予定通りの10%への引き上げに固執し、自民党内幹部を洗脳していたが、首相の頭は財務省不信で固まっている。15年間もデフレを続けた財務省のいうことを聞けば、さらにデフレが続くだけだと首相は信じている。アベノミクスの成功のために財政投資を続けてアベノミクスに息を吹き込もうと考えているようだ。15年間の不況を一時的にせよ崩したことで、首相は財務省より、自分の認識、首相周辺の学者、経産省のいい分を信じているようだ。

 もともとアベノミクス自体が財務相と相談してできたものではない。安倍氏は自身の選択を信じているということだろう。

 ダブル選挙には首相の任期延長の妥算もあったはずだ。ここで勝っておくのが最良の任期延長の理由になったはずだが、その妥算は一応、捨てて、今年末か来年中にもう一度勝負する機会を見出そうというのかどうか。

 5月26、27両日に行われたG7の伊勢志摩首脳サミットは首相の外交手腕を見事に見せた場面だった。安倍首相が政権に就いた直前の日本の相場は(1)倒産一歩手前の債務超過(2)日米関係は最悪(3)欧州からもASEANからも関心を持たれず、まさに“日本売り”の状態だった。それを見事にはね返して、いまや世界の主役を演じているかの如くだ。