梅原淳(鉄道ジャーナリスト)

 鉄道の沿線で列車の写真を撮影することを趣味とする人たちは「撮り鉄」と呼ばれる。その撮り鉄の行動がここのところ世間の強い非難を浴びている。

 4月10日には栃木県の真岡鐵道の担当者がFacebook上に撮り鉄に対する怒りのコメントを発表した。鉄道愛好家はもちろん、一般にも人気の高い蒸気機関車を走らせている同社の沿線で撮り鉄が引き起こしたトラブルやマナー違反に業を煮やしてのものだ。
 さらに、4月20日の報道では5人の撮り鉄が鉄道営業法違反の容疑で書類送検などの処分を受けた。5人の撮り鉄は岐阜県内のJR東海中央線の線路と公道とを仕切る鉄柵を乗り越え、線路の間近で列車の写真を撮影していたという。

 筆者は、鉄道という交通機関への理解を人々に深めてもらうことを主眼として執筆、講演、コメントといった活動を行っていると自負する。そして、鉄道のよき理解者である鉄道愛好家に対しては、一般の人々の手本となり、社会人として他人に迷惑をかけない存在であるように訴え、筆者自身も鉄道愛好家という立場で活動する際にはそのように実践してきた。今回の件で何の落ち度もない人々に被害を与え、不快な思いをさせてしまった点に弁解の余地はない。この場を借りて皆様にはおわび申し上げる。誠に申し訳ございませんでした。

 鉄道を扱う出版社やその関係者には、撮り鉄による今回の一連の騒動を一部の不心得者の悪行と切り捨てる者も多い。特に鉄道ライター、それもいまから10年ほど前の鉄道ブーム前後に異業種から参入した者にその傾向は顕著に見られる。自分自身と撮り鉄との間に一線を画したいのであろう。一個人の考え方であるから支持するものの、鉄道メディア業界に長く身を置く筆者としては今回の撮り鉄の所業は他人事であるとはとても思えない。今回の撮り鉄の行動は昨日の自分自身ではないとしても、20年前、30年前の自分の姿を見ているようだ。

 よくある誤解を解いておこう。それは近年になって撮り鉄が行き過ぎた行動を取るようになったのではないという点だ。かつてはいまよりもはるかにひどく、なおかつ頻繁に発生していたのでニュースにすらならなかった。そうした状況が徐々に改善された結果、トラブルが発生するとかえって大きく取り上げられるようになったのだ。