プロ野球・日本ハムの大谷翔平投手(21)が、またも日本最速記録を塗り替えた。6月5日、東京ドームで行われた交流戦の巨人3回戦に先発し、プロ野球公式戦の歴代最速となる163キロをマークした。四回にクルーズの4球目に投げ、結果はファウルだった。試合後、大谷は「あまり手ごたえがなかった。空振りを取れれば、もっと良かったですけどね」と話したが、今シーズンの大谷の「進化」には目を見張るものがある。

 5月29日の楽天戦に「6番・投手」として出場した試合もそうだった。打者として3安打を打ち、投げては七回を被安打4、1失点に抑えて3勝目をマークした。DH制を採用してからパ・リーグの投手が同じパ・リーグ相手の公式戦でDHを使わず打席に立つのは事実上初めて。かつて日本シリーズの準備のため、シーズン終盤に西武の投手たちが打者としても先発メンバーに名を連ねて以来だという。

 大谷は二刀流と騒がれ、登板しない時に打席に立って平均的な打者を上回る実績を残してきた。今年は4試合連続ホームランを放つなど、打者としても怖さを増していた。それでも、投げる試合と打つ試合が別々 の「二刀流」に物足りなさを感じていた。二刀流の大谷なら、投手として出場する試合でも打席に立ってほしい、立つのが自然と感じていた。それが今回初めて実現し、いよいよ「本物の二刀流」になった。

日本ハムの大谷翔平投手=5月29日、コボスタ宮城(土谷創造撮影)
日本ハムの大谷翔平投手=5月29日、コボスタ宮城(土谷創造撮影)
 これまで栗山監督はピッチングへの影響を考慮して、登板試合では大谷を打席に送らなかった。走者として疲労しピッチングのリズムを崩す、次の回に備えた投球練習などができない、などの不安を避けるためだろう。実際、走者に出た後の回で失点が多い投手はいる。相手投手が走者に出た次の回はチャンスだ、という隠れた常識はプロ野球に限らず高校野球でも認識されている。かつて怪物と呼ばれた巨人・江川投手を打ち崩すため、相手チームがわざと江川を出塁させ、走らせた後、攻略を図った伝説もある。栗山監督はそれを仕掛けたチームの出身だから、そのイメージが強くあるのかもしれない。

 ただ今回は対照的な現象が起こって興味深かった。試合後の報道の中には、次のようなレポートがあった。

 「大谷は走者になって疲れるどころか、打者として打ち、走ったことで闘争心が湧き上がったのか、このところ影を潜めていた燃えるようなピッチングを展開した」

 これぞ野球ではないか。