「清潔」という病


 嫌煙権って、タバコに害があるかどうかなんて実はどうでもよくて、本当のところは日本人の異様な潔癖性が言わせているんじゃないかなあ。煙がどうのこうの、肺ガンになるだのなんのと主張する作戦を考えたヤツが悧巧(りこう)だったんだよ。

 タバコの匂いがいやだ、煙がいやだ、壁に汚いヤニがつく。とにかく自分の身の周りにはいっさい異物は寄せ付けない、無菌状態でいたいという異常な……、もう潔癖症を通り越して清潔病にかかっているんだろうな。それが当然のことだと思っている自覚症状のない〝病人〟にとっては、タバコが眼前の敵なんでしょう。

 ぼくら喫煙者は、そういう人々に囲まれて生きているわけですが、ぼく自身は品位や品行に欠けるどころか、千年以上の昔から人々が伝えてきた嗜みをいまも守り続けている、由緒ある血筋とDNAを持った人種であると思っています。

 だから、嫌煙家はみんなビョーキなんだと考えるしかない。匂いに敏感すぎて、潔癖すぎて、体外に自然に排出されるものだけでなく、必要なものまで削り落として、一日中体を消毒している、そういうかわいそうな人たちなんです。

 ビョーキのおれが言うんだから、まちがいありません(笑)。

 
やまもと・しんや 1939(昭和14)年、東京都千代田区生まれ。63年、日本大学芸術学部演劇学科卒業。翌年、岩波映画製作所で羽仁進氏に師事して助監督となり、65年「狂い咲き」で監督デビュー。「未亡人下宿」シリーズで一躍脚光を浴び、60年代から70年代にかけて約250本の作品を手がけた。テレビ朝日の深夜番組『トゥナイト』『トゥナイト2』に21年間出演し、性風俗に関するルポタージュが後のライフワークに。エイズ問題に関心を持ち、90年代以降はボランティア活動を積極的に行っている。テレビ・ラジオ番組で活躍中。最近著に『カントク記 焼とりと映画と寿司屋の二階の青春』(双葉社)。