河治良幸(スポーツジャーナリスト)

 EURO2016が6月10日(日本時間の11日未明)にフランスで開幕する。今大会から出場数が24カ国に増え、4×6組に分かれてグループリーグを戦い、そこから決勝トーナメント、さらに優勝を目指す流れになるが、グループリーグから好カードが目白押しとなっており、サッカーファンには眠れない夜が続きそうだ。

 優勝争いはブラジルW杯優勝のドイツをはじめ大会2連覇中のスペイン、開催国フランス、急速に成長してきたベルギーあたりか。もちろんクリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガル、若手の台頭が著しいイングランド、タレント集団のクロアチア、伝統的な堅守を誇るイタリアあたりにも流れが向けばチャンスはありそうだが、大会の行方を占う意味でも初戦は重要なカギを握る。

フィンランドとの国際親善試合で相手と激しく競り合うベルギーのエデン・アザール(左)=2016年6月1日
相手と激しく競り合うベルギーのエデン・アザール(左)
 開催国フランスは“聖地”サン・ドニでルーマニアとの開幕戦を行う。本来エースのFWカリム・ベンゼマをピッチ外の問題で、守備陣の主力として期待されたDFラファエル・バランとMFラサナ・ディアラが怪我で選外となったが、スペインのアトレティコ・マドリーでリーグ22得点を記録したアントワーヌ・グリーズマン、若手選手の中でも期待を集めるMFポール・ポグバなど戦力は充実しており、98年W杯でキャプテンとして母国の優勝に貢献したディディエ・デシャン監督がチームをどうまとめていくか注目される。

 対するルーマニアは攻撃陣に目立ったタレントはいないものの、イタリアのセリエAでも屈指の実力者として知られるGKチプリアン・タタルシャヌを中心とした手堅い守りから、MFオビディウ・ホバンを起点に繰り出すサイド攻撃はなかなかの迫力がある。おそらくボール保持率はフランスが60%以上を握ると予想できるが、90分の中ではフランスが押し込まれる時間帯もあるはず。そこでフランスがどうしのいで次の攻勢につなげるか。大会の開幕戦は堅いゲームになりがちだが、フランスにはディミトリ・パイェというFKの名手がおり、大会最初のゴールが彼の右足からもたらされれば、世界中で話題を集めるだろう。

 グループリーグは各国が3試合を戦うが、その1試合目からB組のイングランド×ロシア、D組のスペイン×チェコなど興味深いカードが続くが、特に注目を集めそうなのがE組のベルギー×イタリアだ。チェルシー所属のエデン・アザールを筆頭に大会屈指のタレント力を誇るベルギーがイタリアの堅守をこじ開けることができるのか。中盤から多くのチャンスを演出し、正確なシュートを放つケビン・デ・ブルイネの仕掛けもイタリアの守備を破るための強力な武器になる。

 守護神ジャンルイジ・ブッフォンが後方を支えるイタリアはベルギーと対照的に攻撃陣がタレント不足とも言われるが、こうした大会にかける集中力の高さは優勝経験の豊富な伝統国にしかないものがあるはず。その中で復活にかける快足FWステファン・エル・シャーラウィやロングシュートのゴールが話題を集めたMFアレッサンドロ・フロレンツィあたりがラッキーボーイ的な活躍を見せられれば、攻守が噛み合う形で躍進を遂げる可能性がある。

 その意味でも優勝候補の一角と見られるベルギーを叩けばチームは流れに乗れるだろう。ただ、グループリーグは3試合あるので、0‐0のまま後半まで試合が進んだ場合、無理せず勝ち点1を取りに行くプランも悪い選択ではない。今大会をもって退任することが決まっているコンテ監督の采配次第だ。