安田純平(フリージャーナリスト)
金平茂紀(TVジャーナリスト)
綿井健陽(ジャーナリスト/映画監督)
豊田直巳(フォトジャーナリスト)
野中章弘(アジアプレス代表)
司会進行:篠田博之(月刊「創」編集長)

1月20日の公開前から仲間の間では懸念~安田純平


──安田さんは後藤健二さんと面識があって、1月20日に映像が公開される前から、後藤さんのことは案じていたということですね。

安田 本当に僕の知っている人たちがどんどん戦場で犠牲になっていくような状況で、こういう事件が起きるたびに、「なんで俺はこんなところに居るんだろう」とか、そういう気持ちばかりです。

 後藤さんの件については、昨年10月の末にシリアに行っているらしい、と聞いていました。11月の頭にある週刊誌のインタビューの仕事があったはずなのですが、連絡もない。その後に講演会の予定もあったけれど、そこにも連絡がない。どうもおかしい、ということで、我々の間では11月の半ば過ぎには、何かまずいことになっているのではないか、という話になっていたんですね。

 ただ、これまでのイスラム国の件もそうですけれど、交渉して身代金を払って帰ってくるケースでも、基本的には表に出ないで、ずっと裏で交渉していて、帰ってきた時に実はこうだった、みたいな感じになっている。だから、いま騒ぐのはまずいのではないか、と我々はお互いに言っていました。

 僕もシリアに行った時は、移動する手段もないし、インターネットも繋がらなくなって、1週間ぐらい音信不通になったことがあります。日本では死亡説が流れていたんですが、そういうことはあるんですね。しかも後藤さんは非常に慎重な人でしたから、何か事情があるのではないか、あまり騒がないほうがよいと思っていたんです。
シリア北部アレッポで取材活動中の後藤健二さん(インデペンデント・プレス提供)
シリア北部アレッポで取材活動中の後藤健二さん(インデペンデント・プレス提供)
 でもそれから1カ月経っても帰ってきていないということで、さすがにまずいのではないかと思いました。そのころご家族にどうなんですか、みたいに訊いたんですけれど、奥さんは「取材中です」とおっしゃっていた。むしろご家族はマスコミが騒ぎ出すのを警戒していたようで、外務省に「マスコミから守ってほしい」と言っていたみたいです。

 私がご家族に訊いてみたのは12月の半ば頃ですけれど、12月の頭にはイスラム国側から身代金要求のメールが入っていた。それに対して日本政府は選挙中でもあったし、ほとんど交渉にはなっていなかったみたいです。交渉するとしたら、身代金を払うか払わないかしかないわけですから。

 人質が解放された国というのは、裏でお金を払って、「払っていません」と言い張ってやっているわけですけれど、そのへんの決定も含めて最終的には官邸がやるしかない。ただ官邸もそんな状態じゃなかったようで、事実上動いてなかったんだと思うんですね。で、そうこうしているうちに、1月20日にあの映像が出てしまった。

 その間、政府はヨルダンに対策本部を作って、人は居たけれども、何をしていたのか疑問なんですね。動画が出てからは、ヨルダンが絡んできたりとか、いろいろあって、それ以降の事情については、金平さんの方が詳しいかもしれません。