大内裕和(中京大学教授)

 2013年6月頃に、学生であることを尊重しないアルバイトのことをブラックバイトと名づけた。
 ブラックバイトの私の定義は次のようなものである。「学生であることを尊重しないアルバイトのこと。フリーターの増加や非正規雇用労働の基幹化が進むなかで登場した。低賃金であるにもかかわらず、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課されたり、学生生活に支障をきたすほどの重労働を強いられることが多い」

 ブラックバイトが登場した社会的背景は、第一に正規雇用労働者の減少と非正規雇用労働者の急増による非正規雇用労働の基幹労働化である。1990年代以降、非正規雇用労働者の数が急増したのに対して、正規雇用労働者の数は減少しており、全体の労働者数に占める非正規雇用労働者の割合は、1990年の20.2%から2014年には37.4%へと2倍近く上昇した(総務局統計局「労働力調査」)。
記者会見する労働組合「ブラックバイトユニオン」のメンバー=2015年9月10日午後、厚労省
記者会見する労働組合「ブラックバイトユニオン」のメンバー=2015年9月10日午後、厚労省
 非正規雇用労働者数の急増と正規雇用労働者の減少は、職場における非正規雇用労働者の位置づけを変えることになった。非正規雇用は従来は主として、基幹労働を担う正規雇用を、補助する労働を行っていた。しかし、非正規雇用の急増と正規雇用の減少は、これまで正規雇用が行っていた責任の重い基幹労働を、非正規雇用が担わざるを得ない状況を生み出した。

 従来の学生アルバイトが職場を休んだり、辞めたりすることが容易で、学校生活との両立が比較的簡単であったのは、その多くが職場の補助労働を担っていたからであった。しかし、責任の重い基幹労働を担うようになってからは、休むことや辞めることが容易ではなく、学生生活との両立はとても困難となった。ブラックバイトが蔓延(まんえん)するようになったのは、こうした職場における学生アルバイトの位置づけの変化が影響している。