河治良幸(スポーツジャーナリスト)


【グループB】イングランド2-1ウェールズ


 後半ロスタイムの劇的な逆転ゴールでイングランドがウェールズとの「英国ダービー」を制し勝ち点4でグループBの首位に躍り出た。
 
 試合展開はイングランドにとって非常に難しいものとなった。基本システムは3-5-2ながら自陣寄りで5バック気味の守備陣形を強いてくるウェールズに対し、イングランドは中盤を任されるMFウェイン・ルーニーを起点に迫力あるサイド攻撃を仕掛け、ウェールズのゴールに襲いかかる。

 開始7分にはうまくボールを受けた長身FWハリー・ケインのポストプレーから右サイドのMFアダム・ララーナが縦に仕掛けると、付いて来た左ウィングバックのニール・テイラーを破りながら速いクロスを入れる。リベロのアシュリー・ウィリアムズがケインの対応に出ていたことで薄くなったゴール前に左ウィングのラヒム・スターリングが飛び込んでフリーで合わせるが、左足のシュートは惜しくもクロスバーの上に外れた。

 対するウェールズも最前線に張るFWハル・ロブソン=カヌのボールキープから、素早く追い越したエースのFWガレス・ベイルがパスを受けた勢いでエリア内の左に進出してシュートに持ち込むが、イングランドのディフェンス・リーダーであるガリー・ケイヒルの体を張ったブロックに阻まれた。その後もMFアーロン・ラムジーら中盤のハードワークとディフェンスの粘り強い守備でイングランドの半ば強引な攻撃を跳ね返すが、効果的なカウンターを仕掛けられないまま時間が経過していく。

 ウェールズにとって前半の最大のピンチは32分に訪れた。左サイドからのクロスにゴール前でウィリアムズを制したケインがヘッドで合わせると、横で競り合いに参加しようとしたDFベン・デイヴィスの手に当たったのが。一瞬でそれと分かる様なハンドだったが、ドイツ人ブライヒ主審の笛は鳴らなかった。まさに“命拾い”したウェールズに対し、イングランドはめげることなく攻勢をかけ、ルーニーのCKから長身DFクリス・スモーリングのヘッドは惜しくもゴールをそれた。

 攻める側になかなかゴールが入らない場合に怖いのは相手のセットプレーだ。しかも、ウェールズにはベイルの直接FKという必殺の飛び道具がある。それが炸裂したのはハーフタイムも気になりかけた42分だった。ロブソン=カヌが倒されて得た遠目の位置にボールをセットしたベイルが左足を振り抜くと、MFデル・アリ、スモーリング、ケインが作る壁3枚の頭上を越えたボールが鋭く曲がり落ち、GKジョー・ハートが横っ跳びで飛ばす手先をかすめてゴール右隅に突き刺さったのだ。
先制点となるフリーキックを決め喜ぶウェールズ代表のベール=リヨン(ロイター)
先制点となるフリーキックを決め喜ぶウェールズ代表のベール=リヨン(ロイター)
 後世まで語り継がれてもおかしくないスーパーゴールはクリス・コールマン監督が率いるウェールズに理想的な流れをもたらした様に思われた。ジェイミー・ヴァーディーとダニエル・スターリッジというストライカーが投入されるまでは。演出家はイングランドのロイ・ホジソン監督だ。68歳の老将は後半に向け、ためらうことなく“2枚替え”を敢行した。この決定に対して交代を命じられたケインとスターリングがどういう態度をしたかは分からない。しかし、彼らも納得せざるをえない結果が投入された2人のストライカーによってもたらされる。