遠藤乾(北海道大大学院教授)

 6月23日、イギリスのEU残留・離脱が国民投票で決せられる。ここでは、その帰結がまだわからない段階で、EUへの影響を占う。前もって結論を煎じ詰めれば、どちらの結果になろうと、EUの危機は続くということになろう。なお、ここでは、イギリス自身へのインパクトや、スコットランドや政党政治を含めた国内政治への影響は射程から除外し、政治的な影響に焦点を絞る。

 ‘Poll of polls’という世論調査の平均値を示す数字(6月11日現在)によれば、イギリスの国民は真っ二つに割れている。5月末に発表された移民統計で、去年一年で33万もの移民がイギリスに入国したことが明らかになり、10万人に抑えるとしたキャメロン政権への批判が強まり、「自ら移民を制御せよ」というEU離脱派が勢いづく形となっている。

 もちろん、離脱ということになれば、ことは重大である。EU史上初めて、一加盟国、しかも域内で第2位の経済体であり、フランスと並んで最大の外交・軍事的なプレゼンスを誇る国がEUを離れるわけで、ダメージは避けられない。
記者会見後に握手するオランド大統領(右)とキャメロン首相=2016年3月(ロイター)
記者会見後に握手するオランド大統領(右)とキャメロン首相=2016年3月(ロイター)
 EUというのは、一面で、多くの国が集まることで規模を実現し、共同で影響力をかさ上げする権力装置である。比重の大きいイギリスの離脱によってその一角が崩れることで、EUの影響力の縮小は、国際政治・経済双方で目に見えるものとなろう。それは、EU共通外交安全保障政策の効果から、G7、IMF、世銀などの世界経済上のフォーラムにおける存在感にいたるまで、さまざまな場面で感じられるはずである。

 ただし、それは、可視的なEUへの影響にとどまらない。多国間協力のもっとも濃密な形態であり、組織化の進んだEUが、イギリスのように古くからデモクラシーの伝統を紡いできた国の国民から「否」を突きつけられたとなれば、世界的に多国間主義が揺らぐことになろう。

 EUに話を戻せば、この数年続いてきた危機に次ぐ危機により、すでにそれはダメージをうけていたわけで、イギリスの離脱はそれに輪をかけることになる。

 何とか離脱を逃れたとしても、もしそれが僅差でなされるということになれば、離脱時ほどでないにしても、それに近い影響が想定しうる。つまり、半数に近いイギリス国民がEUを否定することで、EUという存在に疑義が付されるということになろう。

 イギリスの離脱(あるいは僅差での残留)に対して、仮にイギリス以外のEU諸国、とりわけ独仏をはじめとした原6加盟国が結束して、イギリスなしででも、さらなる統合への意思を明確にし、具体的なプログラムを提示しなおすということになれば、EUへのダメージはいくばくか修復されるかもしれない。