イチロー選手が、ピート・ローズの最多安打記録4256本に並び、同じ日にこれを更新した。

 ついにこの日が来た。マーリンズ移籍が決まったときには、出場機会が減ることが予想され、果たして達成できるかと案じられたが、イチローは着実に出場機会を確保し、安打を積み上げて歴史を塗り替えた。昨季は153試合に出場し、91安打を打った。
パドレス戦で日米通算4257安打を放ったマーリンズのイチロー
=6月15日、サンディエゴ
パドレス戦で日米通算4257安打を放ったマーリンズの
イチロー=6月15日、サンディエゴ
 日米通算の数字だけに、「認める・認めない」の議論も賑やかで、日本の野球ファンやメディアが騒ぐほど「世界一」とアメリカでも手放しで賞賛されているわけではなさそうだ。しかし、この安打数が、世界のプロ野球で記録された最高の数字であることは間違いない。日本の野球ファンがイチローの記録に敬意を示すことは誰にも遠慮はいらない。

 イチロー自身は、イチローらしい内野安打でピート・ローズに並んだときも、最終打席で二塁打を放ち、記録を更新したときも、思わず笑顔こそこぼしたが、あまり派手な表現をしなかった。それは、この記録に様々な見解があること、とくにMLBファンの認識をイチロー自身、よく承知しているからだ。

 試合後のインタビューでは次のように話している。

 「ここにゴールを設定したことがなかったので、実はそんなに大きなことという感じはしていない。ピート・ローズが喜んでくれれば全然違う。でもそうではないと聞いていた。だから僕も興味がない。ただ、チームメートやファンの方々の反応がすごくうれしかった」(日刊スポーツより)

 記録を越された当のピート・ローズが、以前から「記録更新」を認めていないからお祭り騒ぎに釘が刺されているのも確か。

 記録達成直前には 「高校時代のヒットの数もカウントするんじゃないか?」などといった表現で、自分の記録が「抜かれた」と表現されることを牽制している。

 これに対して、イチローはほとんど反応していない。ある意味、余裕と配慮を感じる。実際にその記録を抜いたのは厳然とした事実だ。
おそらく、今日よりも明日、そして年月が経過すればするほどにイチローの記録の重さが持って輝くことを、イチロー自身、予感しているのではないだろうか。

 MLBの公式スタンスははっきりしている。 「偉大さは認める。けれど、MLBの記録ではない」

 これは他の偉大な記録に関しても同じだ。MLBはファンが注目し、歓声をあげる記録達成に関して、とくにここ数年は積極的に広報し、話題にしている。観客動員や収益につながる明るい話題ならそれが日米通算記録であろうが共有しようという姿勢だ。けれど、正式記録はあくまで「MLBで記録されたものに限る」と、ここははっきり一線を引いている。今回も同じ。祝福も報道もするが、MLB記録としては認めない。それはそれで当然のことだから、議論の必要も、腹を立てることもないだろう。

 これで次の注目は、イチローのMLB通算3000本安打達成に移って行く。