仲野博文(ジャーナリスト)

第四回【グループリーグ Match22 ベルギー対アイルランド】

 昨年11月、なんとも奇妙なニュースが世界中のフットボールファンを驚かせた。ベルギーがFIFAランキングで1位となったのだ。FIFAランキングを決定するポイントの算出方法が2006年に改定されたため、結果的にベルギーがその恩恵を受けたのだが、これまでのランキングで首位に輝いたのは7カ国。ブラジル、アルゼンチン、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス、オランダで、オランダ以外の国々はワールドカップを制しており、3大会で決勝戦まで進みながら優勝を逃したオランダも、1988年の欧州選手権ではルート・フリットとマルコ・ファンバステンのゴールで優勝を達成している。(編集部注:6月18日現在、ベルギーはFIFAランキング2位)

ヴィルモッツ監督とR.ルカク選手=6月16日
ヴィルモッツ監督とR.ルカク選手=6月16日
 これら7カ国の成績と比較すると、国際大会におけるベルギー代表はどうしても見劣りしてしまう。ワールドカップでは1930年の第一回ウルグアイ大会から出場しており、2014年のブラジル大会では若手選手の活躍もあり準々決勝まで進出。イタリア系の司令塔エンッオ・シーフォが活躍した1986年のメキシコ大会では準決勝まで進んだものの、当時だれも止めることができなかったディエゴ・マラドーナに2ゴールで敗退している。

 欧州選手権では1980年大会の準優勝がベスト記録で、1988年から1996年までの3大会は予選を通過できずに大会出場を逃している。2000年はオランダとの共催でホスト国として参加したものの、まさかのグループリーグ敗退で大恥をかいた。その後、2004年から2012年までの3大会は予選敗退で出場できず、今大会が16年ぶりの欧州選手権出場となる。13日にリヨンで行われた初戦でイタリアに敗れたベルギーは、18日のアイルランド戦に是が非でも勝利しなければならない状況に追い込まれたが、それでもベルギーの躍進を期待する声は少なくない。

 優勝候補にベルギー代表を推す声が多い理由は、謎だらけのFIFAランキングではなく、現在の代表チームが同国史上最高といっても過言ではない才能あふれる選手達で構成されているからだ。代表の主力となる選手はヨーロッパのビッグクラブで活躍し、年齢も20代半ばから後半が多く、選手として一番脂がのっている時期だ。ワールドカップのブラジル大会で躍進した勢いをそのままに、予選を首位で通過して本大会の出場権を手にした。

 「黄金世代」と称される現在のベルギー代表に対する期待は高い。今大会に出場しているベルギー代表の顔ぶれを見ても、イングランドやスペインのビッグクラブでプレーする選手が多く、黄金よりもむしろベルギーが世界に誇るダイヤモンドという表現の方がマッチしている。世界一の取引量を誇るアントワープから各国に輸出されるダイヤモンドのように(ダイヤ産業はベルギーの輸出品の約7パーセントを占める主要産業なのだ)、ベルギー生まれのフットボーラーは若くしてヨーロッパのビッグクラブに移籍し、そこで世界中から集まったトッププレイヤーとの激しい競争にさらされることによって、より輝きが増すよう「研磨」されている。

 このチームを率いるのが、現役時代に泥臭いプレースタイルで「闘う豚」と呼ばれファンから愛された、フォワード出身のマルク・ビルモッツ監督だ。現役時代はベルギー代表でも活躍しており、2002年のワールドカップ日韓大会では、初戦の日本戦でゴールも決めている。