河治良幸(スポーツジャーナリスト)


【グループD】クロアチア2―1スペイン


 クロアチアの“結束力”がスペインの“支配力”を打ち破った、そんな試合だった。

 チェコ戦の終盤にゴール裏から複数の発煙筒が投じられ、中断後に同点ゴールを許したクロアチア。さらに“過激派サポーターグループ”から再犯の予告がされ、ものものしい状況で行われた試合はスペインが開始7分にモラタのゴールで先制した。中盤の組み立てから相手がクリアしそこねたボールを拾うと、ボールを受けたダビド・シルバが中央に流れながら左足でスルーパス。そこに二列目から右斜めに走るセスクがセンターバックのギャップを突いて抜け出し、最後は厳しい角度から飛び出してきたGKダビド・デ・ヘアの脇を破るボールを送ると、ゴール前に詰めたFWアルバロ・モラタが左足で鮮やかにネットを揺らした。

 ボールポゼッションに優れるスペインが早い時間帯に理想的な先制ゴールをあげたことで、試合は一方的な展開になるかとも思われたが、ここからクロアチアの粘り強さと攻撃のクオリティが発揮される。追加点を狙うスペインに対して守備をプロテクトしながら、奪ったボールを素早く縦に運んでスペインのディフェンスに襲いかかる。14分にはデ・ヘアがバックパスを処理しようとしたところにFWニコラ・カリニッチがチェックしてボールロストを誘い、こぼれ球を拾ったMFイバン・ラキティッチがダイレクトでループシュートを放つが、GKの頭上を大きく越えたボールは惜しくもクロスバーを直撃した。

【クロアチア―スペイン】後半、決勝のゴールを決めて喜ぶクロアチアのペリシッチ=ボルドー(AP)
【クロアチア―スペイン】後半、決勝のゴールを決めて喜ぶクロアチアのペリシッチ=ボルドー(AP)
 これまでのチェコやトルコより正確で幅広い組み立てから、ことごとく高い位置に起点を作るクロアチアはスペインに攻守の上下動を強いる。ポゼッションこそスペインが上回るものの、攻撃から守備の切り替わりで間延びする状況が生まれていた。クロアチアの攻撃が実ったのは前半もアディショナルタイムに差し掛かろうかという45分。モラタへのスルーパスをDFベドラン・チョルルカがカットしたところからスタートした。

 自陣の深くまで守備に戻っていたMFミラン・バデリがMFセスク・ファブレガスのプレッシャーをかわして前のMFマルコ・ログに通すと、中盤までボールを運んで左にパス。駆け上がりながらボールを受けた左サイドバックのシメ・ブルサリコは外で待つイバン・ペリシッチを尻目にドリブルを仕掛ける。この試みはDFジェラール・ピケの勇猛なスライディングタックルに阻まれたが、セカンドボールは攻撃人数をかけるクロアチアの側に渡った。

 そこから再びボールを持ったログは相手の守備を引き付けて左ライン際のペリシッチに展開。ここから縦に仕掛けるペリシッチを左サイドッバックのファンフランが阻止しにかかるが、ペリシッチは強引にクロスを入れる素振りから鋭く反転し、右足でゴール前に浮き球のクロスボールを入れた。大型MFのラキティッチがニアサイドで合わせようとすると、中盤から付いてきたセルヒオ・ブスケッツが競りかかるが、ボールは彼らのわずかに上を越え、落下したところにカリニッチが走り込んで後ろ回し蹴りのような右足のキックでゴールを決めた。

 このシーンで秀逸だったのが、ゴールを決めたカリニッチの動きだ。左でチャンスが作られる間にわざと左センターバックのセルヒオ・ラモスと左サイドバックのジョルディ・アルバの間にポジションを取っておいて、手前のスペースからラキティッチがブスケッツと競りに行いった瞬間を見計らって、セルヒオ・ラモスの背後から手前に顔を出したのだ。この絶妙な動き出しによってGKのデ・ヘアも飛び出せず、屈強なセルヒオ・ラモスも対応が遅れた。自陣からの見事な組み立てとFWの見事なフィニッシュワークが噛み合うことで生まれた同点ゴールだった。