岩渕美克(日本大学法学部教授)

 18歳選挙権は選挙権年齢のグローバル・スタンダードが18歳以上であることや、若者の低投票率や少子高齢化で、若者の意見が政治に反映されにくくなることを懸念して導入されましたが、18歳なら主権者として権利を行使することを与えてもいいレベルにあるので、私は基本的に賛成です。ただ、日本の多くの若者は高校3年生に初めて選挙を迎えることになります。学校制度上の問題と、未成年者の選挙運動を禁じた公職選挙法(第137条の2)がバッティングする恐れがありますから、教育現場も政治の側も対応をおろそかにすると、せっかくの選挙権が上手に機能しない可能性があります。

 例えば、18歳選挙権の導入で高校生の主権者教育に注目が集まっていますが、むしろ、今年3月に高校を卒業したばかりの18歳や、7月までに19歳の誕生日を迎える若者への教育のほうが重要だったはずです。でも政治や選挙に関する副教材は高校生には配布されても、社会人や大学生、専門学校生などの若者がどこまで教育を受けられているか疑問が残ります。そんな政治の準備不足が、各種世論調査で「投票に行く」と答える新しい有権者が6割程度にとどまっている原因につながっているかもしれません。しかも実際にはそのうちの7~8割ぐらいしか投票に行かないでしょうから、決して関心が高いとはいえません。ただ20代の投票率は総選挙でも3割と低いものですが、20歳の投票率だけは記念投票の意味でそれほど低くなかったと思うので、新しい有権者も記念に投票所に足を運ぶのではないかとみています。でも記念だけではそのあとが続かないでしょうから、続けて投票に向かわせるように若者に訴えることが政治に求められることです。

 今までも、20歳を迎えて選挙が始まれば、突然投票所の入場券が届かないと気付かなかったわけですから、その意味では主権者教育にスポットが当たるようになったのはいいことです。ただ国民主権ですから、人は生まれたときにすでに主権者です。主権を行使できるようになる年齢が20歳から18歳に引き下げられただけで、突然「選挙に行きなさい」と言われて本を読まされても、新しい有権者は政治を身近に感じないでしょう。

 でも20代の30%という投票率が、30代、40代、50代になると10%ずつ上がっていくように、彼らが年を取ればちゃんと選挙に行くようになるんです。それは、社会の中で税、教育、社会福祉といった問題に触れて、政治を身近に感じるようになるからです。だから18歳から政治を身近に感じさせるには、中学1年生から時間を掛けて主権者教育を行う地道な努力が必要だと思います。各政党も色々な高校に行って選挙権に関する話をしていましたけど、言葉は悪いですが、やっつけ仕事にしか見えない。1回の訪問だけで政治に関心を持つことはありませんから、高校回りを今後も続けて、4、5年後になって長期的な効果を見極めるようにしなければいけません。
2014年12月、こども職業模擬体験施設「キッザニア東京」(東京都江東区)で行われた「こども模擬選挙」(鈴木健児撮影)
2014年12月、こども職業模擬体験施設「キッザニア東京」(東京都江東区)で行われた「こども模擬選挙」(鈴木健児撮影)
 また、3年前にネット選挙運動が解禁されましたが、日本は選挙運動が制限されているし、不備な点だらけです。高3でも選挙権のある生徒とない生徒がいますし、LINEで高1の後輩から「誰に入れるんですか?」と聞かれた高3の先輩が「○○に入れる」と返信しただけで、未成年者の選挙運動に抵触する恐れが出てくるわけです。この程度のやり取りが自由に出来ないのはおかしいので、ネット選挙や選挙運動に関して公選法改正が必要でしょう。