河治良幸(スポーツジャーナリスト)


【グループF】アイスランド2-1オーストリア
【グループE】イタリア0−1アイルランド


 グループリーグの最終日はE組とF組の4試合が行われた。E組はすでに勝ち点6を獲得したイタリアはE組1位での突破を決めていたが、4試合が始まる前の時点でトーナメント表の右ブロックにドイツ、スペイン、フランス、イングランドと優勝候補が出そろい、イタリアはラウンド16で大会二連覇中のスペインとの対戦が確定していた。

 戦前の予想で優勝候補の一角にあげられていたベルギーとクリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガルも3試合目の結果によっては右ブロックに入る可能性を残しており、そうなれば史上稀に見る“死の山”が形成される。その流れを崩したのがアイスランドとアイルランドだ。チームワークを強みとする両国は大会におけるダークホース的な存在ではあったが、持ち前のチームワークに加えて確かな攻守のビジョン、そして最後まで諦めないスピリットでグループリーグ突破を決めたのだ。

 先に試合が行われたF組ではハンガリーとポルトガルが壮絶な打ち合いで3-3と引き分け、ハンガリーが首位に。クリスティアーノ・ロナウドが2得点1アシストと活躍したポルトガルは何とか3位の上位でラウンド16に滑り込む形となったが、裏のカードではアイスランドが後半アディショナルタイム4分の劇的なゴールを決め、難敵オーストリアに2-1で勝利。この結果、アイスランドは2位となり、ラウンド16でB組2位のイングランドと対戦することになった。

 4-4-2のフォーメーションをベースとするアイスランドはタレント力に勝るオーストリアに70%のボールポゼッションを許したものの、セントラルMFのギルフィ・シグルドソンとキャプテンのアロン・グンナルソンを中心に粘り強く自陣をププロテクとし、バイタルエリアから決定的なフィニッシュをさせず、攻めては素早いサイドアタックで屈強なセンターバック陣が構えるオーストリア陣内に攻め込んだ。アイスランドに先制ゴールがもたらされたのは18分。グンナルソンのロングスローからだった。右のタッチラインから思い切り良く両腕を振り抜くと、大きく弧を描いたボールがペナルティエリア内に落下する。ターゲットマンである190cmのDFカウリ・アルナソンが助走を取りながらタイミング良くジャンプして194cmのDFセバスティアン・プレードルに競り勝ち、左にボールを落とすと、FWヨン・ダディ・ボドファルソンがファーストタッチから大型MFユリアン・バウムガルトリンガーのタックルを制してゴールに流し込んだ。
スタンドのファンらと歴史的勝利を祝うアイルランドの選手たち
【アイスランド-オーストリア】スタンドのファンらと歴史的勝利を祝うアイルランドの選手たち
 理想的な形でリードを奪ったアイスランドはオーストリアの迫力ある攻撃に耐えながら、時に鋭いカウンターで応戦する。しかし、後半スタートと同時に長身FWのマルク・ヤンコ、高い個人技を誇るMFアレッサンドロ・ショプフを投入する“二枚替え”を敢行したオーストリアにロングカウンターからショプフにドリブルで中央を破られ、最後はスライディングしながらの左足シュートを右隅に決められた。これで流れはオーストリアに傾いたが、アイスランドの守護神ハネス・ハルドルソンがMFマルコ・アルナウトビッチの強烈なシュートをスーパーセーブで防ぐなど、時に11人がペナルティエリア付近を固める全員守備で逆転ゴールを許さない。

 このまま1-1で幕切れを迎えるかと思われた後半アディショナルタイムの4分。オーストリアの最後のパワープレーをしのいだ直後にドラマは待っていた。GKロベルト・アルマーが放り込んだロングボールをアルナソンがヘッドでクリアすると、右方向へのこぼれ球をMFビルキル・ビャルナソンが大きく前方のスペースに蹴り出す。そこからFWエルマル・ビャルナソンがボールを運び、グラウンダーのクロスに並走したFWアルノル・イングヴィ・トラウスタソンが滑り込みながら左足で合わせ、GKアルマーの伸ばした手を弾いてゴールネットを揺らした。