マイケル・ユー(韓国人ジャーナリスト)

聞き手:金子将史(政策シンクタンクPHP総研 主席研究員)

反日一辺倒の韓国社会に変化の兆し


マイケル・ユー氏
――ご著書『「日本」が世界で畏れられる理由』(KADOKAWA)では、重心を反日でも親日でもなく「克日」に置き、知的で理性的な日本理解を韓国人に促しています。のっけから「そろそろ韓国は、日本の短所ばかりをあげつらう『井の中の蛙』状態から脱却したほうがいい」(「はじめに」)と日本のネット右翼が喜びそうな提言で始まります(笑)。

ユー この本は、日本でいう『文藝春秋』のような『月刊朝鮮』という総合誌に掲載した原稿などを下敷きにしています。日本人ではなく、むしろ韓国人に向けて書いたもので、韓国人にとって耳を塞ぎたくなる記述も多い。驚いたことに韓国でこの本が増刷を重ねています。『朝鮮日報』の書評にも取り上げられるなど、反響があったようです。

――どういった感想が多いですか。

ユー ほとんどが肯定的な意見で、「日本を客観的に見ることができた」「いままで日本人に関心を示さなかったことを恥じる」といった反応が寄せられました。

 日本の出版マーケットでは、韓国による反日行動を批判する「嫌韓本」の売れ行きが良好で、書店で関連書が平積みされています。同様に、韓国でも日本を否定する「嫌日」の本は人気があり、書店にたくさん並びます。親日はいうまでもなく、知日の立場から日本を描いた書籍は珍しい。そのため、読者が手に取ってくれているのかもしれません。右か左かではなく、真ん中の立場で日本と韓国の関係を客観視したいと思う韓国人が少なくないことを実感しました。

――ユーさんがお感じのように韓国の一般社会には日本に対してバランスの取れた見方をしようというベクトルもあるし、さらにいまの韓国社会で「反日一辺倒ではダメだ」という変化の兆しが顕れているのかもしれませんね。

ユー 私も含めた韓国の386世代(1960年代生まれで80年代に大学生、2000年代に30歳代を過ごした世代)の特徴として、日本を見る目が2通りあることも関係していると思います。1つは、「戦時中に韓国を植民地支配していた日本を許さない」と怨恨を抱き続ける見方。もう1つは、「苦渋を嘗めてきた経験を2度と繰り返さないために、日本の組織や技術を学ぶべきだ」という未来に向けた前進を求める見方です。不平不満ばかりをいうのではなく、逆境を乗り越え、新しい国のあり方を模索している世代が台頭しはじめたのはよい兆候です。

 ところが残念なことに、若い世代になればなるほど、再びこの精神は失われていきます。戦争を経験せず、国内の新聞やテレビにしか触れていない20代や30代の若者からすれば、世界が韓国中心に動いているかのような錯覚に陥るのは無理もないことです。彼らが日本を韓国と同列に見なし、根拠のない愛国心を抱くようになるのは韓国にとってプラスではありません。だからこそ私は、日本に対するコンプレックスを認め、それを自ら乗り越えようとする世代に期待しているのです。