小林恭子(在英ジャーナリスト)

 23日に英国で行われた欧州連合(EU)を離脱するか、残留かについての国民投票で、離脱派が約1740万票(51.9%)を集めて勝利した。残留派は約1600万票(48.9%)だった。

 自分自身は残留を望んでいたので、残念だし、信じられない思いもする。これほど英国人はEU嫌いだったのかと愕然とする。

 離脱派と残留派で英国は大きく2つに割れた。残留派を率いたキャメロン首相は10月の保守党・党大会をめどに辞任することを表明している。改めて、現状とこれまでの経緯をまとめてみた(23日付けの筆者の「まとめ」記事に追加しました。)

―結果は予想されていたか?

 今回の国民投票の結果ほど「予想がつかない」と言われた選挙はないといってよい。
 複数の世論調査では離脱派と残留派の意見が拮抗した上に、これまでのような総選挙と違い、過去の結果と比較しながらの判断ができなかったからだ。

―なぜ離脱派が支持されたのか?

 巨大になったEUの官僚体制への不満、ユーロ圏経済の混迷にみる先行き不透明感、難民問題に対処できずおろおろするEUといった、EU自体への不満に加え、国民に強い危惧感をもたらせたのが、移民流入問題だ。
国民投票を控えてロンドンの中心部の広場にはイギリスの国旗と欧州連合(EU)の旗を持った人が集まった=6月19日
国民投票を控えてロンドンの中心部の広場にはイギリスの国旗と欧州連合(EU)の旗を持った人が集まった=6月19日
―EUはなぜ生まれた?

 EUはもともと、第2次大戦後、欧州内で2度と大きな戦争が起きないようにと言う思いから生まれた共同体だ。当初は経済が主体だったが、欧州連合(EU)と言う形になってからは政治統合の道を進んでゆく。
単一市場に加入するという経済的目的を主としてEC(後にEUとして発展)に英国が加盟したのは1973年。当時は加盟国は英国を含めて9カ国。人口は約2億5000万人。現在は28カ国、5億人だ。当初は西欧の経済状態が似通った国が加盟国だったが、今は加盟国内での所得格差、失業率の差が大きい。

 英国では2015年、純移民の数が33万人となった。英国から出て行った人と入ってきた人の差だ。そのうちの半分がEU市民だ。英国は多くの人が使う国際語・英語が母語だし、失業率も低い。EU他国から働き手がどんどん入ってくるのも無理はない。人、モノ、サービスの自由化を原則とするEUにいるかぎり、市民がやってくることを止めることはできないのだ。

―なぜ今、国民投票が行われたのか?

 底流として長い間存在してきたのが、反欧州、あるいは欧州(=EU)への懐疑感情だ。大英帝国としての過去があるし、「一人でもやっていける」という感覚がある。社会の中の周辺部分、つまり、英国には階級社会の名残があるが、労働者階級の一部、および中・上流階級の一部に特にそんな感情が強い。
 社会全体では、「他人にあれこれ言われたくない」「自分のことは自分で決めたい」という感情が非常に強い。だから常に、政府でも地方自治体でもいいが、いわゆる統治者・管理者が何かを上から押さえつけようとすると、「反対!」と叫ぶために抗議デモが起きる。

 EUが拡大して、EU合衆国になる・・・というのはまっぴらごめんと言う感覚がある。英国の司法、ビジネス、生活に及ぼすEUのさまざまな細かい規定を「干渉」と見なす人も多い。今回の国民投票の話以前に、もろもろのこうした底流が存在していた。