ローマに誕生した初の女性市長
新興政党「五つ星運動」を若者が支持する理由

 
 イタリア代表が欧州選手権で順調に勝ち星を重ねていた頃、本国では政治に大きな動きがあった。19日にイタリアで行われた統一地方選挙。首都のローマでは、反EUの姿勢を明確に打ち出した弁護士で前ローマ市議会議員のビルジニア・ラッジ氏が市長選に当選し、ローマ初となる女性市長が誕生した。ラッジ氏は2009年に誕生した新興政党「五つ星運動」に所属しており、北部の工業都市トリノでも同党所属の女性候補が市長選挙で勝利を収めている。
 
 ツイッターで200万人以上のフォロワーを持つコメディアンのベッペ・グリッロ氏によって作られた「五つ星運動」は、イタリア社会に現在も深く根付く汚職や縁故主義を一掃することを政策に掲げているが、同時にヨーロッパ統合に反対する「ユーロスケプティシズム(欧州懐疑主義)」のイタリアにおける旗手的存在でもある。
ローマ市長選で当選し、記者会見に臨むビルジニア・ラッジ氏=6月20日、伊ローマ
ローマ市長選で当選し、記者会見に臨むビルジニア・ラッジ氏=6月20日、伊ローマ
 
 ローマでは2014年に地元政界関係者とマフィアの癒着をめぐるスキャンダルが明るみになり、前市長も公費流用疑惑で辞任に追い込まれた。イタリアの伝統ともいえる縁故主義やそれにリンクした汚職に憤る市民の声を代弁する形で、「五つ星運動」は着々と支持基盤を拡大しており、2018年に行われる総選挙で台風の目となる公算が強まっている。仮に五つ星運動による政権が誕生した場合、イタリア国内でもEUと距離を取るべきとの声が強まる可能性があり、今後の動向にも注目が集まっている。
 
 「五つ星運動」が多くの有権者の支持を得た理由は、長年にわたってイタリア社会を蝕む病巣とされてきた縁故主義(ネポティズモ)や汚職の一掃を指針として明確に打ち出し、実行しようとしているからだ。イタリアのネポティズム文化はフットボールよりもはるかに長い歴史を持っており、社会に深く根付いてしまった慣習を一掃するのは無理だという声の方が多いのも事実だが、ネポティズムをはっきりと否定する政党が急速に支持を得るところに、イタリア社会に充満するフラストレーションを垣間見ることができる。
 
 ネポティズモの語源は、ラテン語で「甥っ子」を意味するネポだ。中世ヨーロッパのカトリック社会では、上級の聖職者はかなりの権力を持っていたものの、教義上の理由から結婚や子作りは禁止されていた。自身が手にした権力を残したいと考えた当時のカトリック教会の有力者の間で、甥っ子を実質的な後継者に仕立て上げる習慣が定着し、そこからネポティズモという言葉も世間に広まったと伝えられている。中世にカトリック教会内部で始まった縁故主義は、やがてイタリア社会に広く定着するようになり、現代のイタリアでは若者の就職難を引き起こす原因の1つとされているのだ。