河治良幸(スポーツジャーナリスト)



【決勝トーナメント1回戦】イングランド1-2アイスランド



 大会前の下馬評から考えれば“ジャイアントキリング”。しかし、試合内容としてはアイスランドの必然の勝利だった。とはいえ開始4分にFWウェイン・ルーニーのPKでイングランドに先制ゴールがもたらされた時には多くの人が「アイスランドの勝利は難しい」と思ったかもしれない。

アイスランドのラグナル・シグルドソンは彼らの最初の得点を祝います
同点ゴールを決めて喜ぶアイスランドDFのラグナル・シグルドソン(右端)ら
 昨日のドイツ×スロバキアやハンガリー×ベルギーの結果からも分かる通り、“強者側”がリードするというのは“弱者側”にとって厳しい状況を意味する。しかし、ピッチに立つアイスランドの選手たちは違っていたのかもしれない。すぐに意識を切り替え、優位に立ったイングランドの隙を逃さなかったからだ。イングランドの先制シーンからアイスランドの同点までを少し詳しく振り返りたい。

 立ち上がりからボールを保持してチャンスをうかがうイングランドに対し、アイスランドはコンパクトなブロックを押し上げてプレッシャーをかけるが、右サイドの引いた位置でFWダニエル・スターリッジがボールを持つと、逆サイドのFWラヒム・スターリングが斜めに走り、アイスランドDFラインの合間を突いた。DFビルキル・サエバルソンの裏に抜け出したスターリングを前に出たGKハネス・ハルドルソンが倒してしまいPKに。これをイングランド主将のMFウェイン・ルーニーが右足で冷静に決めた。

 歓喜に沸くイングランドの選手とスタンドのサポーター。しかし、その直後にアイスランドは高い集中力を発揮する。ロングフィードから敵陣右でのスローインを獲得すると、オーストリア戦で同点ゴールを演出した主将のアロン・グンナルソンがタッチラインに駆け寄り、素早くロングスローを投じた。通常より短い距離でニアサイドに落下したボールをDFカーリ・アルナソンが待ってましたとばかりに頭でゴール方向にすらす。するとタイミング良く飛び込んだDFラグナル・シグルドソンがスライディングの右足ボレーで同点ゴールを叩き込んだ。

 具体的な要因としてはグンナルソンのロングスローに対してアイスランドの選手たちがしっかりイメージを共有して、ゴール前の局面でイングランドの守備を上回ったことだが、明暗を分けたのはイングランドのゴールが決まった直後の集中力だろう。イングランドの選手たちはオーソドックスに持ち回りのエリアにポジションを取ってはいたが、ロングボールの競り合いにしても、タッチラインを割った直後のロングスローの対応にしても動きに緩みが生じてしまっているように見えた。ニアサイドでアルナソンに先に触られてしまったルーニーしかり、ラグナル・シグルドソンの飛び出しに反応が遅れたDFカイル・ウォーカーしかりだ。何よりアイスランドがそこを逃さず同点ゴールに持ち込んだことが決定的だった。