こう問題提起をした上で、自由主義的な市場経済、道徳、極端な競争社会、民主主義に伴う政治的対立の激化などをやり玉に挙げる一方で、戦時中の国家総動員体制下で革新官僚たちによって検討された「働く国民の生活を国家が保障する」制度――これは恐らく社会主義体制のことを示唆しているのだろうが――を評価する。

 そして、《地方誘導型の利益分配も機能不全に陥るなか》、《近代自体が終焉と向かう時代がわたしたちの目の前に広がっている》のであるから、《わたしたちは、新しい秩序や価値を創造し、痛みや喜びを共有することを促すような仕組みを作り出す》ことが重要だと、締めくくっている。

 要は資本主義や議会制民主主義が現在の非正規労働者の増加、排外主義、コミュニティの破壊といった問題を起こしているのだから、新しい仕組み(社会主義のことか)を目指すべきだと主張しているのだ。
 恐らく今後、「分断社会」をキーワードに多くの社会問題が資本主義、議会制民主主義の構造的欠陥の帰結であるとして論じられ、社会主義を容認する方向へ世論誘導がなされていくだろう。
年頭のあいさつをする共産党の志位和夫委員長=2015年1月、東京・千駄ヶ谷の党本部
年頭のあいさつをする共産党の志位和夫委員長=2015年1月、東京・千駄ヶ谷の党本部
 この思想攻勢に対抗するためには、消費税増税で減速したアベノミクスを増税延期(又は減税)と財政出動などによって立て直し、まずは景気回復を実現することだ。経済的困難が続くと、国民はおかしな方向に誘導されやすくなるからだ。

 あわせて子供の貧困や奨学金問題などサヨクが取り組んでいるテーマに保守の側こそ積極的に取り組むことだ。経済的弱者に手を差し伸べることは本来、保守の役割であったはずである。

 えざき・みちお 昭和37(1962)年、東京都生まれ。九州大学文学部卒業。日本会議専任研究員、国会議員政策スタッフなどを経て現在、評論家。著書に『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾――迫り来る反日包囲網の正体を暴く』(展転社)、共著に『世界がさばく東京裁判』(明成社)など。