遅れに遅れた最終報告


 最終報告の発表時期も不自然だった。12月14日に速報を発表した際、「1月中目途」としていた最終報告は、遅れに遅れた。問い合わせる報道各社に、市の担当者は「3月までには……」と答え、最終報告に市長は同席しないという話にもなっていた。

 しかし、最終報告は、年度末を過ぎても一向に発表されない。しびれを切らして6月2日、名古屋市役所を訪問したWedge編集部に対し、4月の人事異動で一新されていた担当者たちは、「まだ出せない。時期は言えないが、そんなにかからないと思っている。調査時期(15年9月)から1年かかってしまうようなことはさすがに避けたい」と答えた。

 なぜ出せないのか。市の回答は要領を得ないばかりか、変化もした。5月23日の電話取材では「関係する様々な団体と調整中」だったが、6月2日の対面取材では「自由記述欄のタイピング(入力作業)に時間がかかっているから」という理由が追加された。3月末のリミットを超えた理由は「数字を精査しているとときどき間違いが見つかったためそのつど潰していたから。報告書として出すために体裁的なことなど文面の細かい調整も行い、それらをそのつど市大や上層部に回して確認を取っていると時間がかかった」というもの。

 年度単位にこだわる役人が、その程度の事務処理の遅れを理由に、最終報告の発表を年度越えさせるのも不可解だ。調整している「様々な団体」とは誰なのか。具体的には、いくら聞いても、被害者団体からの抗議の話しか出てこない。「一つ一つ丁寧な対応が必要ですから。それも『調整』です」と答える。

名古屋市の河村たかし市長
名古屋市の河村たかし市長 6月2日、Wedge編集部は河村市長を直撃し、なぜ最終報告が遅れているのか尋ねた。

 河村市長「あれは出しとるじゃろ」
 編「いや、出たのは速報だけです」
 市長「そうじゃったか?出しとるじゃろ」

 河村市長は、何かを隠しているという風ではなく、関心を失っているようだった。

河村市長の"関心"


 河村市長は、調査実施発表の昨年8月24日と、速報発表段階の12月14日に記者会見を行っている。8月24日の発言はこうだ。

 「こういういろんな皆さんからの声が届いたときですね。予防接種の副反応に。届いたときに、やっぱり責任を持って。今までだと、何かこういうことになると、すぐ逃げ腰になるんですけれど、そうじゃなくて、全件調査をするということにきちっと踏み出しまして、日本一のワクチン予防接種先進都市にふさわしいことをやっていきますので」

 「これもね、この間お見えになって。色んな症状を訴えられておる方がね。そういう皆さんの声に応えるということですから、なかなかええんじゃないですかね。いつも全然褒めてもらえんけれど、たまには、名古屋もええことをやるわなと言ってもらいたいわな」

 市長の発言にあるように、この調査は、もともと被害者らの訴えを受けて始めることにしたものだった。中日新聞の報道によれば、2015年1月9日、被害者連絡会愛知支部の会のメンバー10人が河村市長のもとを訪れ、市内のワクチン接種者全員を対象とした健康調査を実施することなどを要望している。市長の発言にも見え隠れするが、関係者からは、市長自身が薬害の可能性を心配して始めた調査だと聞く。そして市の担当者によれば、調査票にも被害者の会の意見を反映したという。

 「有意差がない」という速報を見た河村市長は、「驚いた」と語っている。以下が、12月14日の会見での発言だ。