「私も国会におりまして、薬害の問題というのは、本当に日本の歴史上、大変な課題を抱えておりまして。私の認識では、一番最初はサリドマイドでしたかね。それから、僕らが国会におったころは、何といってもエイズの非加熱製剤の問題があって、ああいうのもみんな対応が遅れていって、それをどこかの自治体がこれだけの大量に調査をして、そこから一定の結論というか、因果関係の大きな重要な要素を引き出していくというのは、初めてではないですか。初めてだと思いますよ」

 「私の素直な感覚を言いますと、役人が言ったやつじゃないですよ。びっくりしましたよ。本当に。まず驚きましたね。この結果はね。こういう格好で、いわゆる子宮頸がんワクチンを打ったか打たないかで、今の数字で言うと、影響が無いという風に見られる数字が出たというのは。何でかというと、エイズやサリドマイドで、そちら側の話を今までずっと国会の中でやってきましたので。薬害という方でね。だから、非常に驚きました」

 この調査は、国会議員時代に薬害問題で「そちら側の話」をやってきたという河村市長が、被害者団体の要望を受けて開始したものなのだ。結果に驚いたのも無理はない。市長も例に挙げているサリドマイド問題では、ドイツのレンツ博士が活躍し、薬害疫学発展の礎となったが、レンツ博士が最終的にまとめたケース・コントロール・スタディーにおけるオッズ比は380である。「典型的な薬害のサリドマイドでは、こういう大きさのオッズ比が出ている。今回、名古屋市で調査した症状を、子宮頸がんワクチンの薬害によるとするのは無理がある」(前出の田中英夫氏)

 薬害オンブズパーソン会議の事務局長を務める水口真寿美弁護士は、12月14日の会見で、「副反応の症状は複合的で一人が複数の症状を持っている。個々の症状ごとに接種者と非接種者との有意差を比べても意味がない」(朝日新聞の記述)と述べている。この「重なり」理論はかねてから同会議が主張しているが、これも「本当に薬害なら、重なりがなくてもそれぞれ単独の症状でも有意差が出ると考えるのが一般的」(田中氏)だ。

詳細解析しても変わらなかった結論


 それでは、薬害オンブズパーソン会議が求めた「さらなる分析」「徹底した分析」で結果は変わったのか。
解析を請け負った名古屋市立大学の鈴木貞夫教授は、Wedge編集部の取材に対し、「名古屋市からの許可がないので取材には対応できない」とする。

 仕方がないので市に「最終報告書で速報から何か大きく結論は変わるんですか?」と問うと、担当者は「変わらないです。変わったら困っちゃいますよね」と答えた。

 ではなぜ、市は、6月18日のウェブサイト公開で、速報と結論の変わらなかった最終報告書を公表せずに、集計結果だけにとどめたのか。そして、オッズ比の開示や、「有意差がない」という結論部分の開示を避けたのか。

 6月20日のWedge編集部の電話取材に対し、担当者の回答は次のようにまごついた。