急成長する中国のネット通販市場。中国2大IT企業のバトルは、ラスト・ワン・マイルの戦略が命運を決める。

 ラスト・ワン・マイルの攻防は、中国でも熾烈な争いが起きている。

 カギを握るのは、今、中国のビジネス界で最も話題にされている馬雲(ジャック・マー)氏が創業したアリババと、馬化騰(ポニー・マー)氏が創業したテンセントだ。アリババは、中国のネット通販最大手で「中国版アマゾン」と称される。一方のテンセントは中国のSNS最大手。対話アプリの配信で成功したことから名付けられた異名は「中国版LINE」だ。

 実は、両者のバトルは、ネット通販市場と宅配市場でも表面化している。

 今年6月、中国の報道機関は、2013年の中国のネット通販市場が米国を抜き、世界1位に躍進したと大々的に伝えた。中国国家郵政局とデロイト中国の最新報告によると、13年の中国のネット通販市場は、前年比5400億元増の1兆8410億元(約30兆6000億円)。08年時点では、1282億元(約2兆円)だったため、この5年間に平均年率70%の成長率で急拡大してきたことになる。

 一方、ラスト・ワン・マイルを担う宅配業界も、それに応じるように急成長を遂げている。中国宅配業界の宅配便取扱総数(全国展開の大手のみ)は13年、前年比62%増の92億個(10年比3.9倍)で、総売上高は36%増の1442億元(約2.4兆円、10年比2.5倍)だった。そのうちの半分以上がネット通販によって生み出されたものだとされている。

 注目は、個人向けのネット通販(BtoC)市場だ。中国のネット通販系コンサルタント「易観国際」が7月末に公表した報告書によると、14年第2四半期のBtoC市場は、総売上高が前年同期比72%増の3205億元(約5.3兆円)だった。

 通販サイトの売上高シェアは、アリババが運営する「天猫」(Tモール)が52.4%で1位。次いで、京東商城の「JD.com」が18.7%、日本の家電量販店ラオックスを買収した蘇寧雲商(旧蘇寧電器)の「蘇寧易購」が3.5%で後を追う。

 2位の京東商城は、5月に米国ナスダック市場に上場した有力企業の一つだが、3月にテンセントから15%(約220億円)の出資を受け、テンセントの傘下に入っている。つまり、中国のネット通販市場は、アリババとテンセントのバトルでもあるのだ。

外部委託か自主物流か


 しかし、1位のアリババと、2位のテンセント系・京東商城の戦略は、ラスト・ワン・マイルの攻め方に違いが表れている。

 アリババのラスト・ワン・マイルはこれまで、日本のネット通販会社と同様、既存の大手宅配会社に委託してきた。中国の物流事情に詳しい名城大学の謝憲文教授は「自前で整備するよりも、第3者を利用することで、コストを下げようとしたのだろう」と推測するが、急激な荷量の拡大に宅配会社側が対応しきれず、配送時間の遅れなどサービス低下が問題に。謝氏は「外部委託が限界に達していたのではないか」と話す。

 こうした中、独自路線で経営基盤を固めてきたのが、京東商城だった。もともと「家電専門から出発し、ネット通販参入後に百貨店化した」(謝氏)という同社の戦略は、ラスト・ワン・マイルを外部委託ではなく、自社で築くことにあった。

 謝氏の調べでは、同社は09年からの5年間に計約93億元(約1540億円)を自社物流の整備に投資した。結果、3月末の時点で、中国36都市に物流センターを7個、倉庫を86個。495都市に1420カ所の配送センターと、214カ所の集荷センターを置き、2万人以上の配送スタッフを抱えるに至った。そして、こうした自社物流を武器に、当日午前11時までに注文した商品を当日中に配送するなどの速達サービスを打ち出し、他社との差別化を図っているという。謝氏は「京東商城がネット通販2位まで成長したのも、自社物流を築いたことに勝算があった」と分析する。

 ラスト・ワン・マイルを自社化する傾向は他社でも見られ、ネット通販3位の「蘇寧易購」を運営する、中国家電量販店最大手の蘇寧雲商も15年までに自社物流を整える計画という。

 こうした他社の動きに慌てているのが、アリババだ。昨年夏に、他の小売店や物流会社との共同物流体制を整える構想を打ち出したほか、昨年末には中国全土90カ所に物流拠点を置く中国家電最大手ハイアールの物流子会社に出資すると発表した。

 中国の株式市場に詳しい京華創業の徐学林社長は「アリババが出資した背景には、自社物流を構築したい狙いがある。全てを自社で整備するのはコストが掛かるため、安全を優先したのだろう」と説明する。

 ネット通販最大手アリババの牙城をラスト・ワン・マイルの自社化で切り崩そうとするテンセントら2番手、3番手たち。中国のネット通販・宅配市場は、混戦の時代を迎えている。