六辻彰二(国際政治学者)

THE PAGEより転載)

 過激派組織「イスラム国」(IS)をはじめ、イスラム過激派は日々ニュースに登場します。しかし、組織が数多くあるため、それぞれがどんな関係にあるかは混乱しがちです。世界の主だった組織を三つの基準で分類して紹介することで、イスラム過激派の世界を整理します。


アルカイダ系 vs.IS系


 現代のイスラム過激派には、大きく二つの系列があります。アルカイダ系とIS系です。
 アルカイダは1990年代末、オサマ・ビン・ラディン(2011年に死亡)らによって設立されました。その主要メンバーの多くは、1979年のソ連侵攻に抵抗して世界中からアフガニスタンに集まったイスラム義勇兵でした。設立当時、アフガニスタン政府を握っていたタリバンに忠誠を誓い、全世界のムスリム(イスラム教徒)に「場所を問わず米国とその同盟者を攻撃すること」=「グローバル・ジハード」を呼びかけたのです。

 アルカイダは各地のイスラム過激派に資金や軍事訓練を提供し、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)、アルジェリアの「イスラム・マグレブ諸国(北西アフリカ)のアルカイダ」(AQIM) 、シリアの「ヌスラ戦線」、ソマリアの「アル・シャバーブ」などを傘下に収めました。また、アルカイダから忠誠を誓われるタリバンは、2001年のアフガン戦争で政権を追われた後も、米軍などへの攻撃を続けており、その兄弟組織には、隣国パキスタンに拠点をもつ「パキスタン・タリバン運動」(TTP)があります。

 これに対して、アルカイダから分裂して勢力を拡大させたのがISです。ISはグローバル・ジハードよりむしろ、「イスラム国家の樹立」を重視しています。2014年6月にイラクからシリアにかけての領域で独立を宣言した後、2019年までにスペイン南部から中国北西部にまで、その領土を広げると宣言。いわばイスラム過激派の世界に新しい活動方針を持ち込んだISは、イラクやシリアで油田地帯を確保しており、「最も富裕なテロ組織」とも呼ばれます。

 新興勢力ISが世界の注目を集める中、2015年3月末までに世界で32組織がISを支持、あるいはそれに忠誠を誓うことを宣言しました。その中にはアルカイダから支援を受けていた組織も含まれており、ナイジェリアの「ボコ・ハラム」はその代表です。その多くは、資金や軍事支援、さらにISの「ブランド」を期待したものとみられます。

 さらに、組織上層部はアルカイダとの関係を維持していても、メンバーの一部が離反してISに加わるケースも増えています。そのなかにはAQIMや、2015年3月16日に日本人5人を含む19人の犠牲者を出した博物館襲撃事件を引き起こした「チュニジアのアンサール・アル・シャリーア」、アルカイダと最も緊密なタリバンやTTPも含まれます。

 アルカイダとISは末端組織の奪い合いによって勢力争いを繰り広げており、これはイスラム過激派の世界の大きな対立軸になっているのです。