ひっそりと睨みを利かせるローンウルフやスリーパーの恐怖


 「ローンウルフ」が増加傾向にあることも見逃せない。ローンウルフとは、文字どおり一匹狼(または数人程度)のテロリスト。本体のテロ組織と直接接触をしないまま、高度な訓練を受けることもなく、独断で突然に事件を起こして世間を騒がせるのである。

 パリ同時多発テロでは、一般市民として生活しながら指令を待つ「スリーパー」の存在を指摘する声も上がった。かつては共産ゲリラや潜伏スパイとしてとられた手法である。
 アルカイダは世界各地にスリーパーの“細胞(セル)”を配置し、入念な計画のもと命令すれば攻撃できる体制を築いていた。ISも戦闘員になりたいと欧米諸国からやってくる若者をキャンプで訓練したあと、一部をスリーパーとして自国に送り返しているらしい。細胞同士は連絡を取り合わないため、ローンウルフ同様、存在の把握が難しい。

 当局の警戒が強化されるにつれて、攻撃対象はソフトターゲットに移ってきた。警備や監視が厳重な官公庁や軍事施設、空港といったハードターゲットを避け、不特定多数の人が集まる劇場や学校、ホテル、公園などを狙ったテロが急増し、一般市民の甚大な犠牲を生んでいる。

キリスト教や仏教に比べて、イスラム教のテロ組織が多いのはどうして?

⇒欧米諸国による身勝手な政策がテロ組織をつくった

 IS、アルカイダ、タリバン、ハマス、ボコ・ハラム、アル・シャバブ……。世界各地で起こるテロ事件の多くにイスラム教を掲げるテロ組織が絡んでいる。これはなぜだろうか。

 イスラム教は好戦的な宗教だとよくいわれるが、実際にはそんなことはない。本来、イスラム教は暴力を否定し、平和を大切にする宗教だ。この問題は、欧米諸国によって虐げられてきたイスラム世界の歴史と強く関わっている。

 中東や北アフリカのイスラム世界は、近代までオスマン帝国(オスマン・トルコ)の支配下に置かれており、そこに暮らす人々は民族や宗派が違っても同じイスラム教徒として共存していた。

 しかし第1次世界大戦前後、イギリスやフランスが弱体化したオスマン帝国を分割し、自分たちの都合で勝手に国境線を引いていった。

 さらに第2次世界大戦後には、アラブ人が住んでいたパレスチナの地にユダヤ人国家イスラエルが建国され、アラブ人は追い出された。その結果、イスラム世界は大混乱に陥り、民族や宗派の対立が起こってしまう。

 その後、冷戦時代にも欧米諸国は中東諸国を都合よく利用し、冷戦が終わってからもさまざまなかたちで介入を続けた。こうして欧米諸国に翻弄されてきた歴史は、イスラム世界で反欧米の思想を増長させた。そのなかからイスラム過激派が台頭してきたのだ。