福田充(日本大学危機管理学部教授)

 日本人7人が犠牲になったダッカ襲撃テロ事件は、レストランとその客が襲撃された無差別テロであった。外国人が多く利用するレストランが武装グループに狙われた形となったが、レストランという警備の弱い「ソフトターゲット」が標的となり、さらには日本人やイタリア人といった外国人を襲撃したことで、世界中のメディアが卑劣なテロの衝撃を伝えた。

 だが一方で、武装グループの側からみれば、彼らは世界中の注目を集めることに成功したことになる。これこそが現代的なテロリズムの構造であり、イスラム国が目指す「グローバル・ジハード(聖戦)」の実践である。今回も、イスラム国(IS)は襲撃後に犯行声明を出し、この武装グループによるテロリズムを追認した。
3日、ダッカの飲食店襲撃テロ現場近くに手向けられた花束(共同)
3日、ダッカの飲食店襲撃テロ現場近くに手向けられた花束(共同)
 バングラデシュでは昨今、テロ事件が続いており、テロの警備は強化されていたが、それでもテロを実行しようとする武装グループを事前に察知して逮捕することは非常に困難であり、そのためには国を挙げてのインテリジェンス(諜報)活動の強化が求められる。

 現代的な無差別テロの標的となるソフトターゲットにはさまざまなものがある。一つは、サミットやオリンピック、ワールドカップなど世界中から要人やメディア、観客が集結するメディアイベント。もう一つは、その国の文化を象徴したりする施設や観光地であるランドマーク。他にもターミナル駅や鉄道、またはレストラン、ショッピングモールなどの集客施設、公共施設などがそれにあたる。今回標的となったレストランは集客施設にあてはまるが、その中でも手荷物検査や警備が最も難しい場所の一つであり、だからこそテロを実行しやすく、その効果も大きい。昨今、テロ事件の標的となっているレストランやショッピングモールは今後、テロが起こる場所として最も警戒すべき場所の一つと言えるだろう。

 現在のグローバル社会において、世界のどこにいてもテロリズムの危険性はある。世界中のあらゆるところでそのシンパがテロリズムを実践するのがイスラム国(IS)のグローバル・ジハードの戦略である。インターネットやソーシャルメディアを活用して世界中のシンパにプロパガンダすることで過激化させ、テロリズムを実行させることができれば、直接的な接触や指揮命令が存在しなくとも、グローバル・ジハードは実践できる。

 中東や北アフリカといったイスラム圏だけではなく、バングラデシュやインドネシア、フィリピンなどアジア諸国にもイスラム教徒はたくさん暮らしている。当然、多くのイスラム教徒は世俗化されていて穏健であり、過激化するのは原理主義的なごく一部に過ぎない。しかし、世界中のいたるところにイスラム教徒のコミュニティがあること、さらには欧米の先進国もイスラム過激派のテロリズムの標的となっていることを日本人はきちんと理解する必要がある。