渡邉哲也(経済評論家)


 印象論で語られることが多いアベノミクスであるが、そもそも論として、アベノミクスとは何なのだろうか? アベノミクスとは、「デフレ脱却」を目的に 1.量的緩和(金融政策) 2.財政出動(財政政策) 3.成長戦略(経済政策)という3種類の政策を主軸とし、「適宜適切な対応を行ってゆく」という安倍政権の総合政策の名称である。何かの特効薬のように捉えられがちであるが、まともな政府であれば当たり前の政策であり、国民を豊かにするために必要なことを行うという話でしかない。

 いつも言っていることだが、問題を解決したければ、印象で語ることは絶対的な間違いであり、問題を分解し、整理したうえで、問題を見つけ対処する必要がある。アベノミクスは政策をミックスした総合政策であるため、特にこれを行う必要があるわけなのだ。これが適切に出来ていないことに関しては、メディアとともに印象論で煽ってしまった安倍政権にも責任があるのだと思う。
記者会見する安倍晋三首相=6月1日、首相官邸
記者会見する安倍晋三首相=6月1日、首相官邸
 また、グローバル化が進む現在、国内の経済情勢を国内事情だけで語るのは絶対的に間違いである。現在発生している株価の低迷も、英国の欧州離脱の国民投票結果による市場の混乱や中国のバブル崩壊などが主要因であり、これは直接的に日本政府が左右できる問題ではないのである。

 まずは目標である「デフレからの脱却とは何か」ということについて、考えてみたい。デフレとは、物の価格が低下し続ける現象のことを言う。つまり、今日よりも明日、明日よりも明後日というように、徐々に物が安くなる現象をいうわけだ。これは一見すると良いことのように思われがちである。消費者からすれば、同じ金額で買える物の量が増えるわけであり、得をした気分にさせられるのである。

 例えば、100円のものが95円で買えるならば5円得した気分になる。しかし、これを1万人が買っていたとすれば、100万円の売上が95万円の売上になることを意味する。つまり、経済の全体的な縮小が起きてしまうのである。100円のものを95円で売るためには、利益の圧縮も必要となり、これが企業の利益の低下と人件費の圧縮やリストラ原因にななり、先安観から購入を控える動きも起きやすい。そして、商品の購入サイクルの長期化は消費をさらに冷え込ませる。

 これがバブル崩壊以降、数十年に渡り続いていたのが日本の現状であり、デフレスパイラルと呼ばれる経済の縮小の再生産を起こしていたわけだ。これから脱却するというのがアベノミクスの目標だったわけである。そして、デフレからの脱却とは政治が意図的にインフレに持ち込むというものである。