著者 中村竜也

 消費税の増税を巡り、与野党問わず日々様々な情報が飛び交っている。一つ気になるのが、今回の増税に関する「選択肢」だ。消費税の変更では通常、「増税」「延期」「凍結」「減税」の4通りのパターンが考慮されなくてはならないはずだ。

 ところが、政治家達の言い分を聞くと「増税」「延期」の2パターンしか議論されていない。恐らく、大多数の国民も同様なのではないか。 

経済財政諮問会議、産業競争力会議の合同会議であいさつする安倍晋三首相(右側中央)。右から2人目が麻生太郎財務相=6月2日、首相官邸
経済財政諮問会議、産業競争力会議の合同会議であいさつする安倍晋三首相(右側中央)。右から2人目が麻生太郎財務相=6月2日、首相官邸
 そもそも現在の日本は「延期」の最中なのだ。本来であれば今頃日本は消費税10%になっていたはずなのだが、経済成長を考慮し「延期」された。にも関わらず、日本経済は引き続きデフレだ。理由はもちろん国内GDPの60%を占める個人消費が落ち込んでいるからだ。

 個人消費が落ち込めば、平均賃金が下がる。平均賃金が下がれば使えるお金が減る。そこに「いずれ増税するのだから」というデフレマインドが重なれば誰でも将来を不安に思い貯蓄に勤しむのは当たり前の話だ。

 つまり、今の政府の議論のままではいずれにせよ、デフレからの脱却は見込めない。消費税増税を延期しても結局は現在の同じことの繰り返しになる。日本国の個人消費を伸ばし、実質賃金を増やすためには少なくとも凍結、もしくは減税が必要だ。

 そもそも消費税とは富裕層にとってはさほど大きな痛みではないが、中間層・低所得層に関しては大きな痛みを伴う出費だ。その一方で増税の度に法人税は下がり続けている。結果として富裕層と低所得層の格差は更に拡大しているのが現状なのだ。(にも関わらず1億何たら社会とやらを掲げているが)

それが証拠に野村総合研究所が過去に発表した国内富裕層の推移を見て欲しい。


 ご覧のように国内の俗に言う富裕層の数は右肩上がりで伸び続けている。日本国内がデフレでGDPが伸びないにも関わらずだ。念のため、補足しておくがGDPとは国内で生産された付加価値の合計だ。それはすなわち購入する側にとっては消費、売る側にとっては所得となる。この三つは必ず=になる。これはGDP三面等価の法則といい誰にも変えられない普遍の法則なのだ。

 そしてこちらが、国民の平均賃金の推移だ(名目賃金であり物価を反映した実質でないことに注意)

 つまり、GDPが下落している=国民の所得が減っているにも関わらず、なぜ富裕層が増えているのか?という問いの答えがこれだ。中間層以下が更に貧しくなり、その分の所得が富裕層に移転しているのだ。そこに前述の消費税増税という更なる負荷が控えてるとあって一体誰が消費を増やすだろうか。

 政府の役人(主に財務省関係者)は「少子高齢化に伴う医療福祉のため」などと寝言を言っているが、であればなぜ消費税増税時に必ず法人税が減税されるのか説明する必要があるだろう。挙げ句の果てに国民の平均賃金が下落を続けている現状にも関わらず、規制撤廃、グローバル化、民間資本の投入、外国人労働者の緩和など、「国民を貧しくする政策」を延々と進めているのが安倍政権なのだ。

 断っておくが、筆者は決して「延期派」などではない。経済は安倍首相が言う通り生き物であり、その都度の状況で何が正しいかは変わってくる。もし、今の日本がインフレで物価の上昇が凄まじいのであれば(要するに国民の需要が供給を上回れば)筆者は迷うことなく増税が必要だと答えるだろう。増税により国内の消費を抑制し過度なインフレを防ぐのは国家の役目だからだ。 

 しかし、現実のところ、日本はデフレだ。賃金が下がり消費が増えない現状でインフレ対策である増税に意味はない。そして、現状維持となる延期も同じことの繰り返しだ。まずは国内のデフレマインドを払拭するために最低でも凍結、できれば減税が求められる。そこで個人消費が上がった段階で初めて増税について議論が必要になるのである。

 安倍政権を始め、政府の人間は今一度、考えるべきだろう。政府は何のために存在するのかを。筆者としては政府の役割とは国民を豊かにし国家の安全保障を守ること、極論としてこの2点に集約されると信じている。