細川珠生(政治ジャーナリスト)

 「ゆとり教育からの転換」により、総授業時数1割増の学習指導要領に基づく学校教育が行われるようになって、今年で小学校は6年目、中学校では5年目となった。今年の小学6年生の全国学力テストは、小学校のスタート時点から「脱ゆとり」でもで学んだ子供たちが受けており、これまでの結果とはどのような違いがでるか、大変興味深い。

 とはいえ、1割増といっても、小学校6年間で278時間、1年間では46時間増えただけであり、1年間を35週と数える学校教育では週単位ではわずか1時間強増えただけに過ぎない。中学3年間でも105時間増だから、ほぼ同じである。結果、総授業時数は、小学校で5645時間、中学校で3045時間となった。しかし、授業時数が最も多かったのは、小学校では昭和46年から55年までの10年間で、6年間の総時数は6135時間。中学校では昭和47年から56年までの10年間で、6年間の総時数は3535時間であるから、「脱ゆとり」で1割増といっても、当時と比べればまだ約1割少ないということになる。それを考えると、いわゆる広義でとらえた「ゆとり世代」の13歳から29歳までの年代が、〝ピーク〞のころと比べて、どれだけ学んだ時間が少ないかが分かる。

 私自身はちょうど〝ピーク〞時に小中学校生活を送っており、あまり自覚はしてこなかったが、「結構勉強していたんだ」というのが今の率直な感想である。「詰め込み教育」を受けた私達の世代は今、社会でも責任ある立場に就いている人が多い。社会に対してどれだけのことが還元できているかで、「詰め込み教育」の真価が問われるとも言えるのではないだろうか。

 一方、「詰め込み世代」であった私の世代の大学進学率は、全体でもわずか24.7%。男子は35.3%であり、女子は13.6%であった。四年制大学・短大を含む大学進学率が50%を超えたのは平成17年度であり、多少の世代の混合はあるが、ゆとり世代の大学進学率が上昇したのも、私からはかなり不思議な現象にみえるのだ。大学進学といえば、一定程度の学力が要求され、また親や家庭の経済状況も大きく影響してくるはずだ。バブル期に大学進学を迎えた私の時代に、共に学んだ友人の中にも大学進学を断念した人が多くいたという事実がある一方、その頃より、学ぶ量としては格段に少なく、またバブル崩壊後の不況にあえぐ時代において、大学数や定員の増加などの事情があるにせよ、大学進学率が上昇したというは、少し理解しがたい現象である。