西アフリカでエボラ出血熱による死者が爆発的に増えている問題で、米主要紙は、米国をはじめ諸外国が感染拡大の阻止に向け素早く対応すべきだと主張した。一方、アフリカの地域大国ケニアの新聞は、感染地域の「封じ込め」は飢餓などの悲惨な結果をもたらしかねないと警告。感染国の一つであるナイジェリアでは、感染予防の一環として閉鎖されている国内の学校を性急に再開すべきでないと提言している。

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 □スタンダード(ケニア)

封じ込めは仲間への裏切り


 東アフリカの要衝に位置し、地域経済を先導するケニアでは、エボラ出血熱の感染地域に対して「封じ込め」ではなく、アフリカ諸国による結束した援助や対応を求める声が上がっている。

 ケニア英字紙スタンダード(電子版)は12日の社説で、リベリアやシエラレオネ、ギニアといった西アフリカの感染国への渡航制限や国境閉鎖が広がっていることに警鐘を鳴らし、「エボラに苦しむ国を罰することのない感染予防の仕組みを整備しなければならない」と訴えた。

 社説は「アフリカ諸国は感染拡大を食い止めるために、財政や技術、人的資源の面で、感染地域に貢献しなければならない」と主張。54カ国が加盟するアフリカ連合が「感染地域の国々を完全に孤立させてしまうと、飢餓や秩序の破壊をもたらす」と警告していることにふれ、「極端で正当性を欠く手段が招く結果は、回復までに数十年という時間と巨大な資源を必要とするだろう」と指摘し、「それは最も援助を必要としている仲間への裏切りだ」と断言する。

 また、「アフリカと世界は、モノや人間の自由な移動を認めるべきだ」として感染地域の「封じ込め」を批判する一方、各国の出入国地点における厳重な検査の必要性を確認しつつも、それは「人道的な検査」であるべきだとし、「旅行者を不必要に疑うのは諸国間の関係を傷つけ、科学的根拠のない恐怖が拡散するのを助長するだけだ」と強調している。

 さらに、ケニア国内では、自国民の保護を徹底すべきだとの意見も出ている。

 ケニア英字紙デイリー・ネーション(電子版)は13日の社説で、ケニア政府が感染地域からの航空便を停止していることなどについて、「適切な対応をしている」と評価。一方で、リベリアから帰国できずに取り残されている一部のケニア人について、政府に対し帰国のためにチャーター便運航などの対応を取るよう「熟慮」を求めている。(西見由章)

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15日、リベリアの首都モンロビアでエボラ
出血熱に感染したとみられる女性を保護する
保健作業員(ロイター)
 □ガーディアン(ナイジェリア)

学校再開は感染危険招く


 今年7月にリベリアから空路で入国した米国籍の男性医師がエボラ出血熱を発症、死亡し、その後も感染者が確認されている西アフリカのナイジェリアでは、感染拡大防止のために取られている学校の閉鎖措置の解除時期をめぐる議論が国民の強い関心を呼んでいる。

 同国の英字紙ガーディアン(電子版)は17日付の社説で、政府が当初は10月13日としていた国内の学校再開を9月22日に前倒しすると発表したことを、医学団体や教職員組合関係者らの発言を紹介しながら批判した。同紙は「ナイジェリアの大部分の学校には、清潔なトイレや水道施設などの基本的な設備すらないことは周知の事実だ」と指摘、拙速な学校再開によって抵抗力の低い子供たちを感染のリスクにさらす可能性があると警告している。

 また、ナイジェリアが今のところ、ギニアやリベリア、シエラレオネのように周辺国から国境を封鎖されるなどの厳しい措置を取られていないのは、「(発症者が確認されてからの)ナイジェリア政府や専門機関の指導や助言」が奏功し、感染拡大を食い止められているからだと強調。そんな中で学校再開を急いでは、国内外に「(エボラへの)警戒を維持しているとの姿勢を示すことはできない」と再考を促した。

 ナイジェリア政府に対しては、さらに手厳しい批判もある。

 同国の英字紙パンチ(電子版)のコラムニスト、ジデ・オジョ氏は10日付で、政府が学校再開を決めたのは、「閉鎖期間が延びる分だけ経営が圧迫される私立校の経営者らが政府に圧力をかけたためだと言い募る向きもある」と、今回の“政治判断”に疑義を投げかけた。

 一方、同氏は、ナイジェリアを拠点とするイスラム教過激派組織ボコ・ハラムのテロ活動によって発生している国内避難民の間でエボラが流行する事態を懸念。避難民らが暮らすキャンプでの感染症対策の必要性などを訴えた。(カイロ 大内清)

 □ワシントン・ポスト(米国)

拡大阻止へ積極対応を


 米紙ワシントン・ポストは17日付の社説で、西アフリカで感染が拡大しているエボラ出血熱について、これまでの米国の対応が不十分だったと指摘した。オバマ大統領は16日、西アフリカに3千人の米兵を派遣するなどの対応策を発表したが、対応が後手に回った結果として感染拡大を許したとして、より積極的な対応を求めている。

 社説は、オバマ氏の対応策が感染拡大を防ぐために十分かどうかは分からないとしつつ、「米国は少なくとも『欠くべからざる国』にふさわしい行動を取り始めた」と一定の評価を与えた。また、リベリアなど西アフリカではすでに2461人の死者が出ているうえ、ワクチンや治療態勢が整わない中で数万人が感染死の危機にさらされているとして、感染者を隔離して事態の悪化を防ぐことの重要性を強調した。

 そのうえで、米国など約30カ国が2月の段階で感染症拡大防止のための取り組みを示しながらも、実際にはエボラ出血熱の拡大を食い止められなかったことを指摘。さらに3月に国境なき医師団がエボラ出血熱の危険性を警告したにもかかわらず、オバマ政権は対策を加速させなかったとし、「米国の最初の数カ月の対応は、十分とは言い難いものだった」と批判した。

 また、安全保障上の危機は悪意をもった国々やグループだけでなく、感染症からももたらされることに注意を喚起。過去に感染が拡大した新型肺炎(SARS)や豚インフルエンザ、中東呼吸器症候群(MERS)などの経験を踏まえ、エボラ出血熱に対してもこれまで以上に真剣で迅速な対応がとられるべきだとした。

 一方、米紙ニューヨーク・タイムズは17日付の社説でエボラ出血熱への対応について、「問題は米国などからの医療支援に十分な速さがあるかだ」と指摘。西アフリカに医療チームを派遣するなどしている中国については「世界第2位の経済大国として、もっとできることがある」と促した。
(ワシントン 小雲規生)